□距離感
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※オモカルが双子設定
※カルイ→姉、オモイ→弟

自分の背が彼より高かったのはまだアカデミー生だった頃だ。
あの頃は腕っ節でも口喧嘩でも自分の方がずっと上だった。
何と言っても自分は姉だ。
弟よりしっかりしていて当たり前。
それに比べてオモイは男にしては小柄でなよなよした子供だった。
喧嘩でもしょっちゅう負けては泣きべそをかきながら家に帰って来ていた気がする。
その度に自分が代わりに殴った相手をコテンパンにやり返していたのだ。
彼が同級生にからかわれている時はいつも自分が背中で庇っていた。

本当にあの頃の彼は頼りない弟だったと思う。
心配だったカルイは頻繁にこう言い聞かせていた。
男ならしっかりしろ。
やられっ放しでいるなんて悔しくないのか。
が、オモイはただ首を横に振るだけだった。
『俺にはできねーよ。』
そう言って何かとマイナス思考な意見を並べ立てては勝手に決め付けていた。
その度に胸の中の心配は大きくなっていった。
こんな調子ではまともな忍になる事すら難しいだろう。
何度その事で悩んだ事か。
幼少時代はそんな状態がずっと続いていた。
状況が変わったのはアカデミーを卒業した頃だった。

下忍に昇任してすぐに、ひょんな事がきっかけでビーの弟子に認定された。
きっかけは何だっただろうか。
確か自分達二人の太刀筋に彼が目を留めたのが全ての始まりだったような気がする。
『お前ら二人、まだまだ伸びしろ♪俺が鍛えりゃまだまだ伸びる♪』
そう言って八尾の人柱力として知らない者はいないその人はニヤリと笑ってみせた。
最初は訳が分からず、二人共ポカンとした表情でお互いの顔を見合わせていた。
里の英雄でもある彼が、しがない下忍の自分達を弟子にすると言うのだ。
冗談を言っているのかと思ったものの、彼は本気らしかった。
そして、本当に自分達を弟子にしてくれた。

その頃からオモイはだんだん変わってきた。
ビーの明るい奔放な性格のおかげもあってか、ようやく少しは自分に自信を持つようになった。
身長も伸びて体格も大きくなり、力も強くなった。
からかわれても言い返せるようにもなり、冗談まで言うようになった。
口喧嘩にも強くなった。
ビーに剣術や体術を叩き込んでもらったおかげで、戦闘でも自分と引けを取らないくらいに強くなっていった。
今ではお互いの背中を預け合えるくらいに良いコンビになり、任務でもいつも一緒に行動する仲になっている。
勿論喧嘩をする時も度々ある。
が、最終的にはサムイ隊長に怒られる形でいつも仲直りをするのが定番になった。
マイナス思考は相変わらずだったものの、それが何事も慎重に考えるという良い癖に変わってもいた。

オモイが昔より強くなった事は自分の事のように嬉しく思った。
それだけ小さい頃は彼の事をとにかく心配していたのだ。
その代わり嬉しい気持ちがある反面で寂しくもある。
頼りなかった弟が姉の自分よりも逞しくなっていく。
例えば、初めて身長を抜かされてしまった時。
初めて力比べで負けてしまった時。
初めて口喧嘩で言い負かされてしまった時。
そんな時は決まってどうしようもない位に悔しく寂しい気持ちになってしまう。
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