□負傷
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ボンヤリと目を開ける。
白い天井が目の前に広がっていた。
蛍光灯が明るい光を投げかけているのが見える。
深く息を吸い込むと、消毒液のツンとする匂いが鼻を突いた。
一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。
背中にシーツの感触を感じる。
どうやらベッドに寝かされているらしい。
顔を横に向けると、窓に掛かったカーテンが風で揺れているのが見えた。

シーは再び天井に目を戻した。
ゆっくり右腕を動かし、右手を顔にかざしてみる。
右手は白い包帯で覆われていた。
包帯からはみ出た指には、かすり傷や切り傷が至る所に付いている。
そして理解する。
自分は今病院にいるのだ。

ベッドからゆっくりと上体を起こそうとした。
が、脇腹に痛みが走り歯を食いしばる。

「っ・・・。」

自分の体を見下ろすと、いつもの黒いアンダーではなく白い入院着に着替えさせられていた。
服の合わせ目が少し開いていて、胸と腹が見えている。
腹にも包帯が巻いてあり、左の脇腹には包帯の下にガーゼが当ててあった。

しばらく包帯まみれの自分の体を見つめた。
再びベッドに横になると、記憶を呼び起こそうと素早く考えを巡らせた。

最後に覚えているのは、仲間に担がれて木から木へと飛び移っていったことだった。
意識が朦朧としていたせいで仲間の顔がぼやけて見えた。
脇腹を押さえて傷の痛みに耐えるのに精一杯だった。
里に着くまでは気を失うまいと心に決めていたのだが、結局激痛には耐えられなかった。
そのまま気絶してしまい、次に目を開けた時には病室の中だったというわけだ。
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