□日はまた昇る9
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「思い出せよ。皆が口を揃えて言ってたな。女のような体と顔だと。」

━それがどうした。何が言いたい!

「自分でも分かってるんだろ?男に抱かれる方が自分には向いていると。」

━っ!

「感知タイプだから感度も良い。そういう面では能力が役立ったな。」

━・・・違う。

「何が違う?お前は淫乱な売女と一緒だよ。あいつらの言う通りだ。」

声に体が強張った。
唇を震わせ、激しく頭を振る。
━・・・っ、違う・・・!

「何を今更。敵に抱かれて善がってたのはどこの誰だ?」

━・・・――――――ッ!!
違う。
違う。
違う。
そんな事ない。
俺はそんなの望んじゃいない。
絶対に違う!
俺は売女なんかじゃない!

「違わない。お前は売女だ。」

突然靄の中から腕がこちらに向かって伸びてきた。
まるで女子のように細く白い腕。
人形のように繊細で整った手。
それがシーの首をがしりと掴む。
咄嗟にその腕を掴んで離そうとするが、相手の力は凄まじかった。
この細腕にそれだけの力がある事が信じられない。
相手の顔が現れ、真っ直ぐこちらを見据えてくる。
思わず目を見張った。
そこにあるのは紛れもなく。

━・・・・・・俺・・・?

自分自身の顔が目の前にあった。
が、その顔立ちはだいぶ幼い。
今よりもやや大きな漆黒の目。
低めの整った鼻。
一見すると女子と間違えてしまいそうな中性的な顔。
細い首に乗った小さな頭。
体付きもさらに華奢だ。
まだ中忍だった頃の自分。
オモイやカルイと同じ年代だった頃の自分だった。
額当ては付けておらず黒い着流しを着ている。
よく見ると首や腕には幾つもの歯型や鬱血の痕が残っていた。
まるで情事の後のようなその姿。
薄い唇を歪ませて吐き捨てるように彼が言った。

「この体がその証拠だ。お前も覚えてるだろ?」

━・・・あ・・・・・・。
フラッシュバック。
一気に昔の記憶が押し寄せる。
今までに交わったチャクラの記憶も、付けられた傷の記憶も、何もかもが自分の中を駆け抜けていく。
頭の奥底に封印していた薄汚れた記憶だった。
━ぁ・・ぁ・・ぁぁぁあああああ!!!
頭が割れてしまいそうだ。
思わず頭を抱えて目を瞑った。
やめろ。
嫌だ。
思い出したくない。
少年が歪んだ笑みを浮かべた。
薄い唇が歪な弧を描く。
男子にしては高い声で彼が続けた。

「お前は売女だ。」

━ち、が・・・・・。
違う、と口を動かすも声にはならなかった。
視界が一気に暗転していく。
目の前の少年が掻き消え、シーも闇に呑まれていった。
必死に腕を伸ばしたが、手は空を切っただけだった。
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