□日はまた昇る7.5
4ページ/4ページ

胸が締め付けられるのを感じ、寝台に横たわるシーを見下ろす。
彼にとって仲間の助けを待っていた時間は、途方もない地獄に等しかったに違いない。
連中はあの手この手で彼を拷問に掛けていた筈だ。
が、一言も里の情報を漏らさなかったと言う。
揺さぶりにも拷問にも屈せずに、ただひたすら里への忠誠心を何とか保っていたのだろう。
全ては里の為。
その健気さが何よりも痛ましかった。
この細い体でどれだけの苦痛を耐え抜いたのだろうか。
どれだけ辛かった事だろう。
まだ自分よりずっと若いと言うのに、もうそれだけの覚悟が出来ているのだ。

━大したものだ。
最後まで彼は己を突き通したのだろう。
ボロボロになるまで耐え抜いた部下の姿に思わず上司としての庇護心が揺ぐ。
言葉を掛けてやりたい。
ただ抱き締めて頭を撫でてやりたい。
生きて帰って来た事を褒めてやりたい。
四代目の為に身を削る事すら厭わなかった過去の自分の姿をそこに見た気がした。
自分と彼はやはり似ている。
感知タイプという戦闘型とは言えない立場。
それなりに能力に対する罵倒や侮蔑も受けてきたに違いない。
忍体術を重視しているこの里では特にそうした偏見は顕著なものだっただろう。
青自身も何度同じ経験をしてきた事か。
どうしても自分達のような補助を司る忍は見下されがちになってしまう。
どれだけ修行を積んで能力を鍛えても一人前だと認めてもらえる事はとても少ない。
それでもそれに縋って生きていくしか道はないのだ。
その孤独や苦しみは同じ経験をした感知能力者にしか分からないに違いない。
そうした痛みを抱えながらも、それに屈せずひた向きに影に徹しようとする強い意志がシーからは感じ取れた。
そして、長年積み重ねてきたであろう果てのない苦労も。
その全てが青には痛い程理解できた。
この実直な青年を少しでも包んでやりたかった。
こちらの手を握る白く細い手に自分の手を重ね、力を込めてそっと包み込んだ。
少しでも自分のチャクラが伝わるように。
知った相手のチャクラに触れれば僅かでも安らぎを得る事ができるからだ。
同じ感知能力者だからよく分かる。
青自身も握られた手を通してシーのチャクラを感じ取っていた。
流れ一つない水面のように静かで落ち着いた、相手を安心させる深みのあるチャクラだった。
何とか喉から声を絞り出す。

「・・・よく頑張ったな。」

静かに呟き、シーの頭に手を添えた。
顔に掛かった金髪を掻き分けてやると、歪んでいた表情が少しだけ和らいだ気がした。
やがてあどけない子供のように安心した表情を浮かべ、静かに彼は寝息を立て始めた。
ようやく落ち着きを取り戻したようだ。
目頭に熱が篭る。
よくここまで耐え抜いてくれた。
もうこれ以上彼に何も求めるつもりはなかった。
今はとにかく休んでほしい。
望むのはそれだけだ。

「今は眠るといい。傷が癒えるまでゆっくり休め。」

労わるようにそう声を掛け、青は痩せ細った部下の手を握り締めた。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ