□日はまた昇る7.5
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神妙な面持ちで彼女もベッドに寝かされている傷だらけの忍を見つめた。

「本当にお人形みたいな顔をしてるのね、この人。」
「・・・。」
「こうして生きていたのも連中が彼の容姿を気に入ったからなのかも。こう言ったら酷いと思うけれど。」

何も言わずに青は立ち尽くしていた。
顔を上げ、再びメイがさりげない口調で切り出した。

「青。」
「何ですか。」
「自分を責めてる?」
「・・・奴らを始末する任務は随分前から私が管轄していました。責任は私にあります。」

こちらの言葉にメイは眉を顰めた。
青の意見に異議や不満がある時、決まって彼女が浮かべる表情だ。
やがて口を開く。

「あの連中は巧妙な手口で根城の場所を隠していたのよ。誰が担当していようと遂行するのは難しい任務だったでしょうね。」
「それは言い訳にしかなりません。他里の彼を巻き込んでしまった。」
「青・・・。」

微かにメイが眉を伏せた。
そっと彼女の細い手が青の頬に触れた。
ひやりとした感触が伝わってくる。
彼女が続けた。

「この人を放って置けないのは、彼が昔の貴方に似てるから。違う?」
「・・・何故そうお思いに?」
「目を見て思ったの。彼、二十年前の貴方とそっくりよ。実直で生真面目な所も、純粋にひたすら影に尽くしてる所も。」
「それは・・・。」
「貴方と同じ傷を彼に抱えてほしくないんでしょう。違う?」

水影の言葉に何も言えなかった。
シーを助けたいと思っているのは事実だ。
他里の人間であるこの青年に部下としての信頼と好意を持っているのもまた然り。
そして同じ立場にいる彼に親近感を抱いてもいる。
我ながら自分のこうした心境に驚いていた。
たった一人の若い忍にここまで触発されるとは。
この青年に自分と全く同じものを見出した事も大きいだろう。
影の補佐として生きる事に対する実直さ。
道を開き、仲間を導き支える『目』の役割を果たす感知能力者としての志。
揺るぎのない忠誠と強い意志で影と向き合う姿勢。
そして、里の為なら己の命すら差し出せる程に純粋な忠義心。
そこにはどこか危うさすら感じ取れる。
まだ若僧だった頃の自分を見ているような錯覚を、この若者を見る度に何度も感じたものだ。
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