□溢れる
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ガラガラと戸を開けてシャワー室を出る。
バスタオルを取ると体や髪の水滴を拭き取り、私服に着替えた。
ようやくホッと肩の力が抜けた気持ちになった。

ふと鏡に目を向ける。
鏡には自分の血色の悪い顔が映っていた。
じっとその顔を見つめる。

『人形のように綺麗な顔だな、お前は。他国の忍にしておくのが勿体無いくらいだ。』

今日相手をした他国の要人にいわれた言葉が頭の中に甦った。
暗部の先輩からも綺麗な顔だとよく言われたが、自分にはそれがどういう意味なのか分からなかった。
自分からすれば顔に綺麗も何もないと思う。
ただ目と鼻と口が付いているだけだ。
自分の顔のどこが綺麗だと思えるのだろう。
到底理解できなかった。

浴室から出てそのままベッドに向かった。
家には居間と台所と寝室が一緒になった広い部屋が一つあるだけだ。
それでも自分にとっては住みやすい部屋に思えた。

ベッドにどさりと倒れ込み、柔らかいシーツに顔を埋めた。
息をついて天井を見上げる。
まだ体が痛い。
今日は貪るように体を抱かれ、開かれた。
こちらも快感の渦に溺れてしまいそうになった。

『木ノ葉の暗部は徹底的だな。上司らにもこうやって叩き込まれたんだろう?』

ギュッとシーツを握り締めた。
頭から回想を打ち消す。
別にこういう事には慣れている。
ずっと前からこの任務を受け持ってきたのだ。
こういう任務に向いた体を作る為に、先輩達に体を開かれもした。
違和感を抱いたことはあったものの、任務だと割り切って今までずっとこれを繰り返してきた。
疑問を持った事は一度だってなかった。
ダンゾウがそう望んでいたからだ。
忍に心はいらない、と。
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