□雲隠れ2
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「・・・人柱力でも、俺らと同じ人間だろう。」

ユギトは目を見開いた。
フッと笑みをこぼしてシーを見つめる。
里に視線を戻すと、ポツリと呟いた。

「・・・同じ、か。」
「ああ、同じだ。それにアンタは俺の姉でもある。」
「・・・そうだね。」

シーも里に目をやった。
ちらっと彼を見ると、彼は小さな笑みを浮かべて里を見下ろしていた。
何となく胸の奥に温かい気持ちが広がっていくのを感じた。

「(・・・アンタはこんな私でも、姉だと思ってくれるんだね。)」

人柱力であるユギトを姉に持つシーは、少なからず周りから好奇や奇怪な目で見られてきた。
一部の仲間からは敬遠されたり、あからさまに不気味がられたりすることも多かった。
それでも彼はユギトを姉として慕ってくれている。
人として認めてくれている。
その気持ちだけで胸に染みるほど嬉しかった。

「・・・ありがとう。」

声には出さずに小さくささやく。
シーはそれには気付かず、里にそびえ立つ山を、建物をじっと眺めていた。

突然空を覆っていた雲の間から青空が覗いた。
澄み渡った紺碧の空だ。
日光が降り注ぎ、少し眩しく感じる程だった。
顔に手をかざし、ユギトは日の光を遮った。
日光に照らされて、電線の水滴が、地面の水溜りが輝いて見えた。
とても綺麗な光景だった。

『美しいですね。』
「(ああ、本当にね。)」
『雨は好きではありませんが、雨上がりは格別です。』

珍しくよく喋る声にユギトはフフ、と笑みを漏らした。

「(又旅。)」
『何でしょうか。』
「(私、ここの忍でよかったよ。幸せだ、とても。)」

頭の中で、どこか楽しそうに小さく笑う声が響いた。
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