□雲隠れ2
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咄嗟に声を掛けようとした。
が、ユギトが動く前に向こうがこちらに顔を向けた。
端整な顔に驚きの表情が浮かぶのが見えた。
切れ長の黒眼が見開かれる。
すぐに彼は印を結ぶと、バチバチと音を立てる稲妻と共に姿を消した。
と、ユギトのすぐ下でバチバチッと音がした。
身を乗り出して下を見ると、すぐ下の通路にシーがこちらを見上げて立っていた。
顔をしかめて弟は言った。

「どうしてそんな所にいるんだ。」

ユギトは笑って答えた。

「ここにいれば涼しいからさ。眺めもいいし。」
「落ちたらどうする。」
「物騒な事言うんじゃないよ。アンタも心配性だね。」
「『も』?」

首を傾げるシーにユギトは言った。

「さっきも又旅に同じ事を言われちまってね。」
「二尾が?」
「ああ。」

シーは腕を組んでユギトを見上げていた。
黙ってそんな彼を見つめ、ユギトは再び口を開いた。

「何ならシーも上に来な。風が気持ち良いぞ。」
「断る。」
「即答かアンタ。」

シーが無表情で言った。

「姉さん、とにかくそこは危ない。下りた方がいい。」
「大丈夫だよ。」
「落ちてからだと遅いだろうが。」

シーは眉間にワを寄せた。
ユギトは再び笑って答える。

「心配いらないよ。それに、落ちても人柱力だからすぐには死なない。」

ユギトの言葉にシーは溜息をついて言った。
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