□雲隠れ2
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声の言葉にユギトは再び笑った。
声も小さくコロコロと音を立てて笑う。

再び里を見下ろす。
里を歩いていく人達が小さな点のように見えた。
鳥たちがチッチッとさえずりながら飛び立っていく。

高い所は好きだ。
小さい頃からよく塀や高い場所によじ登っては、そこからの眺めを楽しんでいた。
弟はそんな自分の姉を見る度に、危ないから下りるよう頼んできたものだ。
普通なら弟が高い所に上がり、姉がそれを心配するのだろうが、自分達姉弟の場合は逆だった。
一度、弟を背負って一緒に二人で建物の屋根の上まで上がったことがあった。
その時はあまりの高さに弟が泣き出してしまった。
後でこっぴどく親に怒られたのを今でも覚えている。
懐かしい記憶にクスリと笑った。

『今度は何を笑っているのですか。』
「(いや、昔の事を思い出してさ。あの頃は子供だったなって。)」
『私からすれば、あなたは今でもまだまだ子供です。』
「(酷いね、それ。アンタの物差しは長過ぎるんだよ。)」

風がそよそよと吹いてきた。
自分の束ねているくすんだ金髪が、風に吹かれて揺れた。
ユギトはじっと里を見つめていた。
何気なく里を歩く人を眺める。
ついでに建物にも目を移す。
塔のような形をした建物には、外側を円形に取り囲んだようにむき出しになった通路が付いていた。
そこでも人が歩いていて、建物の中に出入りしている。

ふと、その中に見覚えのある金髪の人物を見つけた。
自分がいる場所からすぐ隣にある建物の通路だ。

『どうされました?』
「(ちょっと黙ってな、又旅。)」

じっと目を凝らしてその人物を見つめる。
きびきびとした足取り。
線の細い体。
額当てをしているせいで押し上げられた、やや癖のついた淡い金髪。

「(シーじゃないか。)」
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