□雲隠れ1
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弁解がましくシーが答える。

「仕方ないだろ・・・。連日で任務に明け暮れて、書類を溜め込むハメになったんだからな。休むわけにもいかなかった。」
「だからって無理するのは感心しないね。もっと自分をいたわりな。アンタは真面目すぎるのが玉にキズだよ。」

ユギトはそう言うとシーの頭に手を置き、くしゃくしゃにした。
シーは嫌そうに頭を振ったがまんざらでもないようだった。
いかにもよくある姉弟図。
目の前の光景にダルイは思わず頬が緩んだ。

ユギトがシーの頭に手を置いたままダルイに言った。

「悪かったね、ダルイ。シーの面倒見てくれて。大変じゃなかった?」
「いや、大丈夫っス。最初倒れたときはビックリしましたけど。」

シーがこちらを睨み付けて言う。

「だから言うなと言ってるだろう。」
「あ、悪い。」
「ハァ・・・、お前って奴は。」

そう言うと彼は溜息をついた。
ユギトとダルイはお互い目を合わせ、おかしそうに笑った。
ユギトが言う。

「それじゃ、私はもう行くよ。アンタ達もがんばって。特にシーは、無理するんじゃないよ。」
「言われなくても次からは気を付ける。倒れたのはたまたま調子が悪かっただけだ。」

シーがそう言うと、ユギトは笑って言った。

「本当、気をつけるんだよ?じゃないと、周りが心配するからさ。私も心配になるしな。」

それじゃあまた、とこちらに手を振って、ユギトはさっさと歩いていった。
束ねた長い金髪が、ゆらゆら揺れている。
猫のしっぽのようだ、とダルイは思った。
そういえば、彼女が身体の奥に宿している尾獣も、猫の姿ではなかったか。
シーとダルイはそのままユギトを見送り、立ち尽くしていた。

「・・・俺達も行くぞ。」
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