□距離感
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と、急にオモイが立ち止まった。
考え事に集中していたせいでそのままカルイは彼の背中にぶつかった。

ボスッ

いつもならこれ位で倒れたりは絶対にしない。
オモイの前では絶対に。
弱さを見せつけてしまうような事は今まで一度もなかった。
が、今日は疲れが溜まっていたらしい。
その場で尻餅を突いてしまう。
相手を見上げてキッと睨み付ける。

「オーモーイー・・・。いきなり止まんじゃねー!」
「わ、悪かったって!そう怒んなよカルイ。」

こちらの形相に怯んだオモイが慌てて言った。
こういう時は昔と何一つ変わっていない。
それでも怯えた表情を見せなくなっただけマシだった。
昔はもっとビクビクしていて臆病だったのだ。
決まり悪そうに彼が言う。

「さっきから何も言わねーからさ。何かあったのかと思って。」
「・・・別にどうもしねーよ。そんな事よりさっさと里に帰るのが先だろ。」

ムッと答えて立ち上がろうとする。
が、足に力が入らなかった。
そんなに自分はくたびれているのだろうか。
何て情けないのだろう。
自分自身に悔しくなり、思わず唇を噛んだ。
オモイがしゃがんでこちらの顔を覗き込んできた。
黒い目が心配そうに見つめてくる。

「ひょっとして疲れてるとか?」

オモイの質問には何も答えず、カルイは目を逸らした。
図星だった。
正直今歩き出すのは辛い。
歩き過ぎで足の関節が鈍く痛んでいるらしい。
それでもそれを押し隠そうとした。

「・・・馬鹿言ってんじゃねー!これっぽっちも疲れてなんか。」
「本当か?」

真剣な表情でオモイが問う。
言葉が喉に突っ掛かり、答える事が出来なかった。
双子だからだろうか。
こちらの事はすぐに伝わってしまうらしい。
精一杯言葉を探したが結局諦めた。

「ちょっと足が攣っただけだ。大した事じゃねーし。」
「でもそれだと歩けねーだろ。」

尤もなオモイの言葉に何も言えなくなった。
自分の情けなさに思わず俯く。
頭を掻きながら彼は何やら考え込んでいた。
咥えていた棒付きキャンディをもごもごと口の中で動かすと、やがて立ち上がった。
こちらに背中を向けてしゃがみ込むと、振り返って言った。
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