企画用

□やきもち
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「ダーリンッ!」

「うわっ、なんだよリカ!」


ふう、と俺は誰にも気づかれないように溜息をつく。

見慣れているはずの後光景に胸が痛むのは何故だろう。

それはきっと、一之瀬が女子と仲良くしているから。

ズキズキ痛む胸を抑え、俺は水道へと走った。










「鬼道!」

「………ん?」


ゴーグルを外してばしゃばしゃと顔を洗っていれば、見慣れた顔がそこにあった。

何の用なのだろう、と思い彼に声をかける。


「どうしたんだ、豪炎寺」

「いや、鬼道の様子がおかしかったから……心配で追って来てみた」


変なところは鋭いな、と苦笑しつつ「なんでもない」と告げる。

ゴーグルに手を伸ばせば、その手は豪炎寺に遮られた。


「綺麗な目をしているな、鬼道」

「……?早く練習に戻るぞ。豪炎寺、お前は戻ってきたばかりだろう。次のエイリア戦も控えている」


そう言っても、豪炎寺は俺の手を離さなかった。

……こんなに物わかりの悪い奴だったか?

首をかしげたい気持ちを抑えつつ、あいている片方の手でゴーグルを取る。


「一之瀬、か」

「!」


ビクッと自分の身体が揺れるのが分かった。


「鬼道、感情が隠しきれていない」


そう言い放つ豪炎寺は何一つ顔色を変えない。

一体、何を考えているんだ。

ぐっと強い力で豪炎寺に引き寄せられる。このままじゃ抱きしめられる!?そう思った時、



「鬼道!」



愛しい声が俺を呼んだ。

大好きな、一之瀬の香りに包まれる。


「豪炎寺!俺の鬼道に何してるんだ!」

「ふっ、俺の鬼道?どの口がそれを言う。女子といちゃいちゃしていたくせに?なぁ、鬼道」

「!」


言いたいことだけ言って豪炎寺は去っていた。














ゴーグルをつけ、近くのベンチに一之瀬と腰をかける。


「…豪炎寺に何かされた?」

「いや、何も………」


しいん、と辺りは静まり返った。遠くでチームメイト達の声が聞こえる。

早く練習に戻らなければ監督に怒られる。

そう思いつつも、身体はいう事を聞いてはくれない。


「…………鬼道」


沈黙を破ったのは一之瀬だった。


「やきもち、やいてたって本当?」

「…………………少し、だけだ」


嘘はつけない。と思いながら本音を小さな声で呟く。

その声は一之瀬に届いたようで一之瀬は「そっか」と言った。


「嬉しい、鬼道がやいてくれるなんて。」

「……重く、ないか。男子の嫉妬なんて」

「鬼道なら大歓迎さ。鬼道は世界一可愛いから」

「な……っ、馬鹿者…」


ふっと笑えば一之瀬にキスをされた。

久しぶりのキスに鼓動は一気に高まる。

たどたどしくキスに応えていれば、一之瀬は唇を離して俺の耳元で呟いた。


「俺が好きなのは、鬼道だけだから」


その言葉に泣きそうになったことは、俺だけの秘密にしておこうと思う。




【やきもち】



(うまくいったな、豪炎寺)
(ああ、土門の言う通りだったな)
(にてもキスしてんぜ)
(……俺たちは練習に戻ろう)
(そうだな)




END

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