企画用

□笑顔
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「鬼道、可愛い!」


ある日、ふっと笑っていれば円堂が俺に向かってそう言ってきた。

可愛い、などという自分からほど遠い言葉に一瞬俺の頭はクラッシュする。


「か、わいいだと…?」

「うん。鬼道いつも悪役みたいに笑うからさ!断然俺はそっちの方がいいと思うよ!」


特に何も考えずに円堂はこう言っているのだろう。

そう思う事にして、俺は部室へと向かった。















「鬼道、ね、笑ってみてよ!」


次の日のまた次の日もこうして円堂に笑ってとせがまれた。

一体何事かと聞き返せば、

「笑った鬼道みたい!可愛いもん!」だそうだ。


「円堂…笑えと言われて笑えるもんじゃないんだ」

「え―…でも鬼道すっごく可愛かったんだぜ?」

「っ、その可愛いというのはよせ」

「本当の事なのに?」

「か、勝手にしろ!」


バサッとマントを翻し、練習へと戻る。

円堂もあきらめたらしく、ゴールの前で声掛けをやっていた。

まぁ、一時的なものだろう。円堂は一直線だからな。

ふう、と溜息をつき俺は練習に専念した。











「鬼道!笑って!」


円堂がそうせがむようになってから一か月がたった。

チームのみんなも円堂のあきらめの悪さに呆れていた。


「…円堂……」


いつも円堂は俺が独りでいるときにやってくる。

ふう、と溜息をつくと円堂がニコリと笑った。


「鬼道の笑顔好きだぜ。本当に可愛いもん」

「…可愛いというのは女子に使う言葉だぞ」

「え?鬼道のが可愛いよ?」


無自覚なのか、天然なのか。

円堂が好きな俺にそれ以上の褒め言葉はないというのに。


「ふっ、しょうがないやつめ」

「あ、笑った!!!!可愛い!キスしていい?」

「!?」

「いいじゃん。ね?鬼道」


いいだろ?とせがんでくる円堂を押しのけられるはずもなく。

キスの前に「なんで俺なんだ…?」と聞けば、





「鬼道が、好きだからだよ」





という返事が返ってきた。どうやら俺は彼には敵わないらしい。






【笑顔】






END

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