企画用
□君のいる夜
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豪炎寺が、帰ってきた。
雷門へ、イナズマキャラバンへ。帰ってきた。
嬉しかった。愛しかった。
話したいこともたくさんあったし、豪炎寺を感じたかった。
だけど。豪炎寺を見ると豪炎寺に何もできなかった自分に罪悪感を感じてしまい話しかけにはいけなかった。
夜も眠れず、円堂と豪炎寺がキャラバンの上で話しているのに気づかれないよう、俺はその場を後にした。
*
「綺麗だな………」
沖縄とだけあって、海はとてもきれいだ。
少し塩の香りがする夜風が気持ちいい。
空を仰ぎ、星を見つめる。あの小さな星の近くにエイリア学園はあるのだろうか、なんて柄にもないことを思った。
「…俺は、何をしているんだろう」
帰ってきた豪炎寺を避けて。たくさん話したいのに。
謝りたいのに。どうして。
理由は分かっている。自分は豪炎寺と対面するのが怖いのだと思う。
もし、拒否されたら。なんて無いことを思ってしまう自分がいる。
そして、豪炎寺が帰ってきて気が付いたこともある。
豪炎寺が最後に頼るのは、悩みを相談するのは円堂なのだ。自分じゃ、ない。
「………円堂…、か」
ふっと自分のキャップテンを思い浮かべて苦笑した。
誰もあいつには敵わない。
「…何が、円堂なんだ?」
「!」
ふと、後ろから声がした。この声は……、聞き間違えるはずもない豪炎寺だ。
唖然としている俺の隣に豪炎寺が座る。
「久しぶりだな、鬼道。会いたかった」
「豪炎寺………」
「キャラバンの中に入ったら鬼道がいなかったから、探しに来た」
「そ、そうか……」
久しぶりの豪炎寺の声。
当たり前の事なのに、すごくドキドキして緊張する。
「鬼道、すまない」
「?」
「その、真帝国との試合とか…いろいろあったんだろう?つらいときに傍にいてやれなくて、すまなかった」
「そ、それはこっちの…台詞だ…。豪炎寺が苦しんでいたこと…気が付けなくてすまなかった」
「鬼道………」
ぎゅっと優しく豪炎寺に抱きしめられる。
久しぶりの豪炎寺の体温と香りを感じてひどく安心した。
出さないように耐えていた涙が溢れだす。
「鬼道、聞かせてくれ。つらかったこと全部」
「……っ、総帥に会って…佐久間と源田が…敵になって……、染岡が抜けて…吹雪が倒れて、風丸も栗松もいなくなって…円堂がサッカーへの意欲をなくしてしまって……っ!」
「ああ」
「つらかった……。…でも、っグス…豪炎寺がいない分俺がカバーしないとって思って……っ」
いつか雷門に「こういうときでも動じないのは鬼道くんだけね」と言われた。
違う、俺はそんなに強くない。
ただ、誰よりも動揺を隠すことがうまかっただけ。本当はつらかった。
俺の動揺を見破れる唯一の豪炎寺もチームにはいなかったから、俺の精神はほぼ、ぼろぼろだった。
「鬼道……」
「……っ、豪炎寺…、もういなくならないで…くれ…っ」
ぎゅうっと豪炎寺の袖を握る力を強くする。
豪炎寺が抜けると言った時、本当は泣いてでもひきとめたかった。
でも、豪炎寺が抜けることを選んだから。止められなかった。
あの時の豪炎寺の瞳には決意が込められていたから。
「鬼道っ、もう離れはしない。ずっと傍にいる」
「豪炎…ン…っ!」
奪われるようなかみつくようなキスが俺を襲った。
余裕のない豪炎寺の表情に、会いたかったのは俺だけじゃなかったと再確認できてうれしかった。
息も、すべて奪われるようなキスに俺もおずおずと応えたのだった。
その後、どうなったのかはご想像にお任せしよう。
【君のいる夜】
次の日、腰を抑え、ベンチに座る天才ゲームメーカーと監督に怒られているエースストライカーの姿が見れたとかなんとか。
END