長編book

□01
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影山総帥がいなくなって、精神的に参ってる時も。
ゲームメイクでいい案が浮かばず寝不足な時も。


気が付けば、いつも隣でお前が俺を支えてくれていた。





01.10年後の不動





「鬼道くん」


聞きなれた声が俺を呼んだ。振り返れば、そこには思った通り不動明王の姿があった。

最近はチームにも馴染んできてたまにだが笑顔も見せるようになった不動。
そのせいか、話す機会も多くなっていた。


そして、不動は俺の彼氏でもある。


「今日練習なしだろ?俺の部屋に来いよ」

「ああ、少し準備してから向かおう」

「じゃ、待ってるぜ」



俺は、知らない。

あと少しでこの不動が俺の前から消えるということを。





















不動の好きなバナナを持って、不動の部屋をノックした。

しかし、返事はない。いつもならかなり短くだが中から返事をしてくれるのに。
不審に思いながら不動の部屋のドアを開ける。


「…不動?入るぞ?」


ドアを丁寧に閉め、部屋を覗けばベットの上に人影が。

寝てしまったのだろうか?と思い机にバナナを置きそっと寝顔を覗こうとした瞬間。




「うわあああああっ!?」




ベットの上の人物に驚愕。なんと、不動ではなかった。
もっと鮮明に言えば「知らない誰か」。


「……なんだよ…うるせぇ…」


俺の悲鳴で目覚めたのかベットの上の人物はむくりと起き上がって俺を見た。
ぱくぱくと口を動かしている俺をよそに、目の前の彼はじいっと俺を見つめている。

そして、何かを思いついたかのような表情になり、口を開いた。


「……お前、もしかして鬼道くん?」


何故、目の前の彼が俺の名前を知っているのだろうか。
そうです、という意味を込めてこくりと頷けば彼は「やっぱり」と言って笑った。

その笑顔が浮動と重なって俺の焦りをさらに仰いだ。


「俺、不動明王」

「………え?」


目の前の人の自己紹介にあっけにとられる。

今、不動って言ったか?
でも不動はこんなに髪の毛長くなかったし、こんなに大人びていない。

そんな数分でこんなに変わるなんてありえない。
しかし、同性同名の人物にしては似すぎている気がする……。


「未来から来たんだ、俺」

「………」

「信じてない?まぁ、鬼道くんの性格からしてタイムスリップとか信じないか」

「…不動、なのか」


笑う顔も、小さな仕草も。不動そのままだ。
変わっているのは容姿だけ。

未来から来たというのはにわか信じがたいが、認めざる負えない気もする。


「俺と鬼道くん付き合ってるっしょ」

「!」


ニヤリ、と目の前の不動は笑った。


俺と不動は正直隠すことがうまい。
だから、付き合っていることは誰にも言わず隠している。

それを、知っているという事は。



「……不動…」




目の前の男は確実に不動明王だというだという事実がさらに俺を混乱させたのだった。




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