長編book

□05.初めてのキスはオレンジ味
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◆豪炎寺side



「お邪魔します」

「ああ、上がってくれ。家には誰もいない」



しいん、と静まり返っている家の中を俺たちは進んでゆく。
何度も足を運んだ鬼道の部屋へと入り、俺はソファに腰をかけた。

鬼道は俺のとなりにちょこんと座った。不覚にもかわいい、なんて思ってしまう。

肩に力が入っている。緊張しているのだろうか。身体なんて何度も重ねたのに。

それとも……、




(今からの行為を楽しみにしているのか)





そう思ってすぐ俺は自嘲気味に笑った。そんなことありえないのに。

でも、でも。今日が最後なんだ。
少しくらいうぬぼれてもいいだろう?
少しくらい期待したっていいだろう?




「鬼道。飴は好きか」

「飴……?人並みには好きだ」




俺はバックからオレンジ味の飴を取り出す。

俺の行動に首をかしげている鬼道を横目に俺は飴を自分の口の中へと入れる。
じわり、とオレンジの味が口全体に広がる。





「オレンジ味は食べれるか」

「ああ。もちろん……っ!?」




返事を聞き終わらないうちに俺は鬼道にキスをした。
カランという音を立て、口移しで鬼道の口の中へオレンジの飴を押し込む。





「……っん、」




キスはオレンジの味がした。当然だろう。

俺は鬼道の唇を堪能し、次に舌を入れ鬼道の口の中へと侵入する。
甘いオレンジの味がする中、俺は鬼道の舌を絡め取る。

少し薄めに目を開けば、顔を真っ赤にした鬼道が瞳に映る。




(すまない、鬼道)




そう鬼道に心の中で謝罪しつつ、俺は初めての鬼道とのキスに没頭した。

慣れないながらも不器用なりにキスに応えてくれる鬼道はとても可愛かった。
もっと、そばでそんな鬼道を見ていたかった。
そんな思いがあふれ出す中、俺は俺に言い訳をした。


今日が最後だから。
最後のキスだから。
これで最後にするから。

鬼道のことちゃんと親友として見れるようになるから。



だから、今日だけは。
俺を見ていてほしい。
俺のことだけ考えてほしい。

そう願うのは欲深いだろうか?





長い長いキスを終え、俺は鬼道をベットに押し倒した。

オレンジの飴は、溶けてしまいもうない。





「……っ、豪炎寺…」

「鬼道…、好きだ……っ愛してる」





鬼道の目に衝撃が走るのを見ながら、鬼道に言葉を言わせないためにもう一度キスをした。

そして、俺はいつものあのセリフを言う。







「抱いていいか、鬼道」








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