復活
□Cigarette
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唇に柔らかなものが触れた感じがした。
見えないのもあり、突然の事に目を見開いてしまう。
「っ…ううんっ…」
抵抗出来ず、力が抜ける。
スルリと缶が手から滑る。
缶は、コロコロと流れていった。
そして視界の端には、缶が転がり落ちて、夜空を駆ける黄色い流れ星が映った。
「ふっ…く、…んっ…ひばり、…さん…っ!」
ドン!と強く押し、震える声で呟く。
「な…ん、で…」
呆然とする俺に、雲雀さんは静かにいった。
「…好きだ。」
そう言うと、自分のポッケをまさぐって、何故か煙草を俺の前に突きだした。
「…どういう味か知ってる?…教えてあげる」
グイッと引っ張られ、あっという間に再び唇を重ねられる。
雲雀さんからは、苦いけれども何処か甘い煙草の味がした。
もしかしたら、夜空を駆ける流れ星の味も混ざっているからかもしれない。
(こう…いう…味なんだ…)
煙草の味に陶然としていると、雲雀さんが冷笑を浮かべた。
「…わかった?」
俺はとりあえず、小さく頷く。
雲雀さんの、夜のように冷たい目付きなのに、コーンポタージュのように、温かく細められている漆黒の瞳に…俺は折れてしまった。
「俺も…好き…です…。」
震える声で告げると、顎を掬われてまた唇を重ねられた。
雲雀さんのかっこよさと、煙草の依存性に…酔わされる感じがしてしまう。
雲雀さんからは強いcigaretteの味がして、その味に頭がぼうっとしていってしまって。
そんな俺を雲雀さんは強く、離さないと言うかのように抱き締めて俺の耳元で囁いた。
「抱いて、いいよね?…まあ、拒否権なんて沢田にはないけどね」
…結局俺は逆らえなくて。
けど、それなのに…愛しさが勝って、しまう。
俺は小さく頷き、背中に腕を回した。
―真夜中の路上で、cigaretteの煙がたちこんでいて、俺は誘われるように闇に紛れてしまって。
その先で出会った、漆黒のような貴方に…、そこで知ったcigaretteに俺は酔わされてしまって。
そして、これから先はきっと、漆黒のような貴方に酔わされていくのだ――。
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