歌詞題材

□クフフのフ〜僕と契約〜/六道骸
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幼い頃、憎きエストラーネオファミリーに、僕も千種も犬も…他のまだ年幅もいかない子も、モルモット同然に扱われていた。

あそこ以上の地獄は、僕はないと思います。
毎日描かれる地獄絵図に、僕はとうとう反旗を翻した。

短い三叉槍を手にし、醜いマフィアの汚ならしい血を浴びながら、自分らを玩具同然に扱っていたエストラーネオファミリーを、壊滅して―。

マフィアなんて、醜い以外の何物でもない。
だから、純粋で美しい世界に変える為にも、強大な力を得て、全世界のマフィアを殲滅したいのです。

ねぇ、沢田綱吉。

だから、僕にその身体を差し出してくださいよ。

血の通った温かい頬に掌を滑らせ、異質な瞳で見下ろせば、大きな瞳で生意気にも以前より強い光を宿しながら、見つめ返される。

「…だとしても、俺は信じるよ、骸を。…俺は…マフィアになりたいなんて、思ってない。ダメダメで初代が言うような「自警団」なんてカッコいいものにもなれる自信なんてないし。けど、―守りたいって思う人を守れるような人間に、なりたいって思うんだ」

だから。

悲しい目を僕に向けてから、弱く華奢ながらも、包み込むような優しさと力で抱き締められる。

「骸に乗っ取られるわけにはいかないんだ、…俺にとって骸も…守りたい人、だから、」

あぁ、悲しい目の君は、僕にとって愛しい玩具です。

玩具だから愛しいのか、愛しいから玩具にしたいのかなんて、わかりたくもないですが。

そんな玩具である君が、随分生意気なことを言うようになりましたね。

…けれど、不思議、です。

「僕が君に守られなければならない程弱いとでも?しかし、…不思議と嫌悪感を感じません」

同情や優しさや正義感など、反吐が出そうなものを、押し付けられているというのに。

君から与えられるそれらは、不思議と嫌悪感を抱かせない。

何故でしょうね、彼は非力でマフィアを殲滅するための玩具でしかないというのに。

クフフ、と意図せずに笑みを溢しながら柔肌を撫で、僕らしくない言葉に驚いている彼の顎に手を添えた。

「それでも僕は君が欲しい。ほら、一瞬でいいんで乗っ取らせてくださいよ。君が願い乞うなら楽に乗っ取らせてあげますし。勿論、貴方が望むなら永久にでも構いませんが」

寧ろ僕としてはそちらのが都合がいい。

自分らしくない感情から目を逸らすように、冗談混じりに目を細めて笑えば、恐怖からか先程の様子とは打って変わり、ガタガタと震えた。

大きな琥珀に張る透明の薄い膜に加虐心を擽られ、クフフとまた笑う。

「何故泣くんです、僕が悪いみたいじゃないですか?僕に乗っ取られることは光栄なことなのに」

「オマエが怖いこと言うからだろー!?つかぜんっぜん光栄に感じないし!!」

ムンクの叫びのように顔を歪めながら叫ぶ様は、酷く滑稽で面白い。

馬鹿馬鹿しいはずなのに、…この瞬間が幸せだなんて思う僕は、随分彼に絆されてしまったようだ。

認めはしませんが、どうやら僕は君が好きなようです。
それは、恋愛感情も込みで。
だからこそ君の全てが欲しいし、僕の隣に君がいるようにしたい。
それは、純粋で美しい世界。
マフィアの消えた世界で、操られた君と、霧のカルネヴァーレを踊ることは、なんて素晴らしいことでしょうか。

少しずつ、少しずつ、僕が君に絆されたように、君も僕に絆されて、最後は壊れてしまえばいい。
最も、僕は壊れたりなどしませんが、ね。

「沢田綱吉。逃がしませんよ」

「だから嫌だってー!!」

嗜虐に細めた異質な2つの瞳で見つめ、細い四肢をばたつかせる彼を抱き寄せながら、触れるだけの口づけを落とした。

これは、予約という名の契約の口づけです。
様々な意味の…ね。

彼のような澄んだ青空を軽く仰ぎ、僕は一つ、笑った。
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