歌詞題材

□クフフのフ〜僕と契約〜/六道骸
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様々な事件を経て、随分と強くなった彼と自分の生身で久しく出会ったのは、数時間前のこと。

様々なマフィアにボンゴレ10代目、彼曰くネオ・T世ボンゴレが彼と言うことが、バレ始めてきている。
即ち、それは反ボンゴレ派のマフィアが、彼の暗殺を企てることが多くなったというわけで。

マフィアなんぞ嫌いな僕にとってそれは、マフィア狩りに打ってつけの状況で。

マフィアを潰すためにも、僕自身が勝手に、動いていた。

―否、もしかしたら。

彼に魔の手が忍び寄るよりも前に、悪い芽は摘んでしまおうと、潰していたのかも、しれません。

甘ったるい理由に、自分自身眉を潜め小さく息を吐く。

当たり前なのだが返り血をたくさん浴び、傷をそれなりに負ってしまった。

さっさと本拠地に戻ろうと、人気の少ない道を歩む。

閑散とした道に差し掛かり、荒い息を吐きながらコンクリートの壁に掌をつき、ジクジクと痛む傷痕に荒々しく舌打ちを溢した。

同時に、徐々に近づいてくる弱い足音に小さく目を瞬かせる。

徐々に近づくそれは僕を見るなり、反対に琥珀色の瞳を大きく見開かせた。

弱いはずなのに、秘めたる強さと爆発力が凄まじい、次期ボンゴレのボス―否、ネオ・T世ボンゴレこと、沢田綱吉。
僕が、出会う前から身体を乗っ取りたいと切望している、本人。

様々な事件を経て、僕を少しは知り始めている彼でも、過去のことがあるからか何なのか、怯えたように琥珀色の瞳を揺らした。

僕の片方ずつの目の色が異なる忌々しいオッドアイには、マフィアの世界には相応しくない、怯えた顔が映る。

あぁ、この状況で言うのもなんですが、―会えて嬉しいですよ。

なんて、―ベタすぎ、です。

「沢田、綱吉」

溢れた名も感情も、吊り上げた唇も、愉悦に歪むはずなのに。
―絞り出した声は、苦しげだった。

「む、骸、オマエ…その、傷、」

ガタガタと大きく震えながら、滴る赤黒い液体と、裂けている傷口を見たからか、沢田綱吉の声は滑稽なくらいに沈んでいる。

「クフフ…このくらい、なんてことないですよ?」

早く去らないと、その身体乗っとってしまいますが。と、気丈に笑いながら告げれば、ヒー!!とこれまた面白く怯えられた。

クフフ、本当に面白い方ですね。やはり、その身体が朽ち記憶を失うその前に、是非契約しておきたい存在です。

怯える彼に小さく笑い、去ることを促せば、何を思ったのか、ゆっくりとだが僕に近づいてきた。

実際に幻想ではないものの、僕のこの様子が幻想かもしれないと、思ってもみないのでしょうか?

これだから君は、―お人好しとバカにされるんですよ。

「沢田、綱吉。乗っ取りますよと何回言ったらわかるんです?それとも、乗っ取られたいんですか?…っ」

「そ、そんなわけないだろーっ!?…でも、だからって…骸を、ほっとけないよ」

壁に手をつきながら鼻で笑う僕に、大袈裟に言い返しながらも、眉を下げながら悲しげな、それにて真剣な瞳で、ポケットからハンカチを出す。

出したハンカチを、生々しい傷に強く巻き付けては、まだたくさんある傷痕を目にし、より一層悲しげに眉を下げた。

深緑の麻が淀んだ黒に染まり、傷の深さをアリアリと映し出す。

「まったく、君って人は…本当に、バカですね」

「っなー!?確かに俺はダメツナだけどさあ…つーか、ダメツナって分かってんなら、いい加減俺を乗っ取ろうとすんのやめろって」

優しくされることが慣れていないからか、彼の反応を見るのが楽しいからか、ついつい素直ではない捻くれた言葉が、口から出てしまう。

案の定彼は微か慌てながら怒ったかと思えば、呆れたように息を吐く。
そういえば、僕に対して彼は呆れるか怯えるかくらいしか、接していない気がする。

ダメツナと自他共に認める程に、確かに彼は色んな点において、ダメっぷりを発揮している。

アルコバレーノにかけられた呪いを解く代行戦では、彼の家庭教師であるアルコバレーノが、彼や僕らの目の前で、彼が叩き出した0点のテストを大量に出した。
あの点数には、心底呆れましたよ。
全て空欄を埋めて答えたというのに、一つも当たっていないとは。
ボンゴレの超直感とやらは、マフィアのバトルでしか発揮されないのですかね。
だとしたら尚更、彼がマフィアのボスになるのを拒んでいるのは、勿体ない気がします。

他にも、彼のダメっぷりは挙げることができる。
例えば、授業中の体育で見事にボールが顔面を直撃していたり…。

…どうして他校に通う僕が、学校での彼を知っている、ですか?

クフフ、…そんなのいつでも乗っ取れるように、僕が彼を見張っているからに決まってるじゃないですか。

「やっぱりバカですか?僕が君を乗っ取りたいのは、マフィアのボスに相応しい力を持った君を乗っ取り、マフィアを殲滅したいからです」

勿論、ボンゴレも、です。
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