歌詞題材
□ひとりぼっちの運命/雲雀恭弥
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いつもビクビクと怯えていて、それでも自分の仲間である草食動物を守る時は、真っ直ぐで。
わかりやすいこと、この上ない。
だからこそ余計に、なすがままの心で生きている僕に、傷ついてしまう。
残った書類を草壁に押しつけ、見回りという名の、ストレス解消―草食動物を咬み殺していくことを行った。
いや、詳しく言うならば、群れるばかりで風紀を乱すだけの草食動物を見回りに行ったのだけれど。
授業が終わり、放課後が訪れた草食動物達は、朝よりも群れていて、大変イラつかせる。
事実、先程も校門で群れていた草食動物を、大量に咬み殺していった。
強い奴と戦うことも楽しいが、弱すぎる草食動物を大量に咬み殺すことに、また違った楽しみを覚える。
自分の拠点とも言える応接室に戻ろうと踵を返すと、複数の草食動物の声が聞こえた。
しかし、その中に自分を今イラつかせている原因である奴の声もあって。
取りだしかけた仕込みトンファーをしまい、様子を伺うことにした。
相変わらず群れている、三人組の草食動物は、自分を視界に捕らえたのだろう、各々違った反応を示した。
僕を見る度に突っかかってくる不良は僕を睨み、人好きで野球好きなバカは僕に笑う。
そして、僕を見る度に怯えた姿を見せる、とある草食動物は。
「ひ…雲雀さん…」
大きな琥珀の目に怯えた色を窺わせ、幽霊でも見ているかのように、震えた声で僕の名を呼ぶ。
…僕が怖いなら、話しかけずにもっと離れた場所で、大人しくしていればいいのに。
群れる奴は、本当に嫌いだ。
だから、群れている奴を―特に君を見かける度に、咬み殺したくなる。
僕から離れた場所で大人しくしていれば、君の邪魔などしないのに。
―いや、もしかしたら。
浮かんだ反論に、自分自身内心で毒を吐いた。
「…なに?咬み殺されたいの?」
たった一人の、それもこんな草食動物に振り回されている自分にイラつき、苛立ちをぶつけるかのように、低音で答えた。
それと同時に、鈍く光るトンファーを取り出せば、また草食動物らは各々違った反応を見せる。
―あぁ、イラつく。
君は、―僕だけ見てればいいのに。
抱いた感情に目を見開き、軽く舌打ちを打ちながら、羽織る学ランを翻して、その場を去った。
そんな僕に、草食動物らは不思議そうに顔を見合わせるが、そんなことはどうでもいい。
コツコツと靴を鳴らして、歩き慣れた廊下を歩み、小さく息を吐いた。
怯えているだけの草食動物のくせに、時たま凄まじい強さを窺わせる。
僕が怖いくせに話しかける、君のような奴は苦手で。
柄になく、調子を狂わせられる。
―何故?
僕は、こんなにもアイツに執着している?
セピア色のドアを開き、拠点に戻れば、椅子にどっかりと座った。
―愛なんて知らない。
愛しかたも、分からない。
だから僕は、孤高であり永遠にひとりぼっちの運命で。
彼の仲間である草食動物を想う笑顔も、傷つけられたから浮かべる涙も、全て弱虫の仕業だ。
―だから、あるがままの姿で なすがままの心で、生きていく僕の邪魔しないで。
机に転がるペンを手に取り、壁に投げつければ、再びパラパラと壁の塗装が砕け散った。
―これ以上、僕に近づくな。
砕け散った塗装が、僕を振り回すアイツに見えて、小さく笑みを浮かべ、呟いた。
―それでも尚、これ以上僕に近づくと言うならば、
「咬み殺すよ」