自作お題100!

□自作お題、1〜5
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3「傘」:シンサト
サトシ視点

曇り空から零れる雫に、俺はため息をついた。

ポツポツと降る雫に深いため息をつきながら、学校の門に寄りかかった。

所謂雨宿り状態。
基本傘が嫌いな俺は、あまり傘をもってきていない訳で。

…この有り様だ。

じめじめとした雰囲気にもため息を吐いたときだ。

下駄箱から菫色の髪が見え、さっと目をそらす。

しかし向こうは気付いたようで。

「…何してるんだ」

相変わらず、嫌味をかましてくれる奴だ。

クラスが一緒になってから隣の席同士になったけれど、とことんそりが合わない奴だ。

「…雨宿りしてるんだよ」

黙っても奴こと、シンジは去ってくれないようなので、ボソッと小さく呟いた。

その時、いきなり視界に影が差した。

…え、何この状況。

意外すぎる行動に目を見開き、石のように固まっていたら、シンジは眉を潜めた。

「…やる」

傘の柄を握らされる。

…貸して、くれるのか?

「シンジが濡れるだろ?…ってわっ!」

手首を掴まれた。

シンジの顔は俯いていて、よく見えない。

「…なら、オマエがついてくればいい」

強制的(?)に黒くて大きな傘に入れられる。

…っ、これっていわゆる…。

考え浮かんだ言葉に顔を横に振る。

顔に熱が集まり、真っ赤だ。

シンジはどうなのかと、少し屈んで盗み見た。

…耳がほんの少し、赤かった。

やけにうるさい心臓の音が、伝わってしまうんじゃないかと思う。

シンジの肩…少し濡れてる。

さりげない優しさに、胸が高鳴る。

…って俺…っ、なんで??

…男のシンジに?

混乱しすぎて、頭の中がめちゃくちゃになる中、後もう少しで俺の家まで着く所まで近づいていた。

…送って、くれたのかな。

未だに下を向いているシンジに、胸の奥がキュウと締め付けられるのがわかる。

「…し、シンジ!その…サンキュー…」

足を止めて振り返ると、頬に手が添えられた。

そして…。

「…ッ!?」

俺は口を抑え、固まってしまう。

シンジはフッと笑って「じゃあな」と雨の中を歩いて去った。

「〜ッ、ズリィよ…」

サトシは必死に顔を傘で隠した。

―それは恋の始まる、ある雨の日の二人だけの秘め事―…。
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