その他、版権

□錆びついたリンゴ
4ページ/8ページ

―パン!

放たれた銃弾は、ゼロの仮面の頂点にぶつかり、亀裂を刻んだ。

パサリと舞う艶やかな黒髪に、女性よりも白い肌、そして何よりも自分が大好きだった、アメジストの瞳。

疑惑が確信に、変わってしまった。

ゼロの正体を知れて喜べるはずなのに、ゼロの正体を知って悲しんでいる自分が、いる。

彼女はひどく狼狽した様子で、クラスメイトであり、生徒会の仲間でもある彼の名を呼んだ。

彼の最愛の妹であるナナリーが、扉の向こうにおり、拐われたらしい。

俺に「一時休戦だ、オマエと俺が組んでできなかったことはないだろう?」と、敵であるのに今は「スザク」として接しようとする彼の言動に、ひどく腹が立った。

オマエはゼロなんだ、もう親友でもないし、親友と思われたくもない。

激情に任せて、彼の存在そのものを否定しまっていた。

言ってから何てことを彼に言ったのだろうと、胸が締め付けられたが、もう戻れない。

裏切られたことにショックを受けたのだろう、彼女は岩の陰から立ち上がり、その場を去った。

―ゼロ、そして誰よりも愛している中で親友「だった」彼と、二人っきり。

互いに銃を構え、射抜くように睨みあって、互いの名を呼んで―銃弾を、放った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ