その他、版権
□錆びついたリンゴ
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それはもう、空に暗雲が立ち込めて一条の月光さえ覗かせない、暗い夜のことだった。
「ゼロ、ゆっくりとこちらを向くんだ」
音のする洞窟を進んでいけば、黒いものに包まれる憎い男が佇んでいた。
岩の陰には、ゼロの仲間である紅月カレンが―、…否今は疑惑を抱いているであろうから、カレン・シュタットフェルトがいた。
今にも暴れだしそうな黒い渦を、なんとか抑えて静かに銃を構える。
ユフィを殺した―日本人を虐殺させた、シャーリーの父親を巻き込み死に追いやった。
そんなゼロは自分にとって、「殺したい程憎い相手」。
ゼロを殺してから正体を暴くのでもいい。
けれど、殺してからでは、謝罪も罰を受けることも罪を認めることも、できない。
―逃げるなんて、許さない。
かつてサクラダイトを巡っての、日本とブリタニアの戦争を終える為に、実の父を自らの手で殺めた。
マオからは「死にたがり」と称されたスザクだからこそ、死罪という名の逃げ道をゼロに歩ませたくなかった。
銃を構えたのがわかったからだろう、ゼロは悠然とこちらを振り向いた。
あぁ、早くその仮面を撃ち抜いて、あの憎き面を蔑みたい。
更に渦を巻く黒い感情を抑えながら、平淡な声で岩の陰にいる彼女に問いかけた。
「そこにいるんだろう?」
彼女は驚いた気配をありありと滲ませながら、顔を出した。
きっと彼女も、ゼロの正体を知らない。
ゼロのことだろう、高みの見物を決め込んで、己の正体を明かしはしないだろうから。
銃を持たない、刃を秘める握った拳に力が入った。
「君も、ゼロの正体を知りたくないか?」
引き金を引く指先に軽く力を込め、再び彼女に問いかけた。
彼女は咄嗟に罵声を俺に浴びせたが、明らかに動揺している。
そんな彼女の言葉には返さず、銃の引き金を引いた。