携帯獣
□真夏の甘い食事会
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元はといえば、随分前にレッドが少年に「ゴーの手料理食べたいなあ」などと何気なく…いや、意図的かも知れないがとにかく呟いたことから始まった。
その日は陽も落ち材料もなく、ことは先伸ばしになった。
レッドも少年も互いに忙しく、以前のように修行を出来なくなってしまい、やっと本日に久方ぶりに逢瀬出来たのだ。
本日はレッドの誕生日であり、どうせならと少年は随分前に頼まれた願い事を叶えようと、張りきって準備に取りかかった。
普段は身に付けもしないエプロンをつけ、いつもよりも丁寧に食材を切って…腕を振るいに振るった料理が完成するはず…だった。
食材を切り終え、包丁をまな板に置いたのと同時に影が差した。
疑問符を頭に浮かべながら少年が振り返れば、待ってましたとばかりに細められた赤い目が少年を捕らえた。
まだ料理が出来ていないことは目に見えてるはずで、今日は手伝わないで欲しいと予め頼んでいたから、ここに来る意味などないはずで。
少年は頭脳をフル回転させて考えようとするも、一枚上手な先輩が突然己の身体を弄り回し始めたことにより叶わなかった。
どうして、なんで、こうなったんだ!!
少年は心中で叫びまくり、それを声に乗せて威嚇しようとする。
しかしやはりそれも、一枚…いや二枚くらい上手な先輩により叶わなかった。
「飯も食べたいけど、今はゴーがいい」
熱を持った耳朶を舌先でなぶられながら甘い声で囁かれ、少年はフルリと身体を震わせた。
「っぁ…っ、でもこんな、とこで…っ!」
少年は持ち前の金の目を潤ませながら、戸惑ったように声をあげる。
ここはいつも身体を交えている場ではないうえに、神聖とも言われるキッチンで事を及ぶのに戸惑いが生まれるのだ。
別段、ベッド以外でシたことがないわけではない。
しかし、なんだかキッチンというだけで妙に興奮してしまうのだ。
そんな少年にレッドは優しげに、愛おしげに微笑み、そことなく諭すように言った。
「ゴーを求めるのに場所なんか関係ないよ。…ね、ゴー…食べて、いい…?」
アンタはホントに天然タラシだなチキショウ!
少年は心中で悪態を吐くも、身体中を真っ赤にしてレッドの首に腕を回した。
それは、少年が了承するということを暗に伝えている仕草で。
それを理解しているのか、レッドは笑みを溢すとペロリと舌なめずりをし、少年の赤い耳を食みながら「いただきます」と囁いた。