鬼畜眼鏡
□黒猫は月夜に舞う
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障子や畳みといった日本のイメージそのものを表したような部屋に、己の荒くなっている熱い息と可愛らしい"猫"の啼き声が響く。
繋がっている腰をグッ、と動かせば腕の中にいる"猫"が甲高く喘いだ。
「ひ、にゃぁあ…っ、克哉、くん…っ」
耳を擽る甘い声と猫語に背に甘い戦慄が走る。
艶やかな黒髪から、触り心地のよい耳生やし、更に尻の合間から長い尻尾を生やしている姿に、いつもより己のモノの体積が増えていることがわかる。
「そんなに、俺のが欲しかったか…?」
快感からなのか、震えている猫耳を軽く食んで囁くといつもより強く締め付けられた。
この"猫"が俺だけの"ネコ"だと思うと支配欲に駈られる。
心地よい締め付けに、目を細めながら痼を突き上げた。
「か、克哉、くん…っ。にゃあっ!ぁん…っ」
―本当に、可愛い人だ。
思わず小さな笑みを溢して口付ければ、黒水晶の瞳に映る自分の姿が崩れた。
…分かっていると思うが、一応言っておく。
この世界はファンタジーではない、寧ろ社会の現実さ人間の冷たさを知れる痛いほど感じるくらいにリアリティーな世界だ。
…いや、ファンタジーというか不可思議な事が、「ある奴」の陰謀により起こされることもあるはあるが。
…俺が言いたいことは分かるか?
俺は社員、腕の中にいる人は課長であり、猫耳や尻尾なんぞが通常から生えているわけがない。
それなのに、不可思議なことが起きている。
…勿論、理由はある。
「ある奴」の陰謀によってだ。
今日は2月22日、…知っている人は知っているであろう。
しかし、それだけではない。
この日は、腕の中にいる愛しい人の誕生日でもある。
それに目をつけた、一種の祭り狂な「ある奴」は俺の知らない所で、腕の中の人物に「柘榴ケーキ」を贈った。
…ここまで言ったら分かるだろう、…だが敢えて教えてやる。