鬼畜眼鏡

□薔薇獄乙女(歌詞題材)
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歌詞題材「薔薇獄乙女」

曲:ALI PROJECT様。

御克、克哉視点


ーーー"犠牲"という名の黒き闇の毛皮を纏い、自分を殺してでも氷のように冷たい貴方の元へ私は向かう。

憎しみの炎に散りゆく血の薔薇は、悲しき愛に濡れていく。
私は今宵も紅蓮の夜に抱かれていくのですーー…。

「んっ、ふぁっ、あぁっ…!!…っ、くぅっ、ふぅ…っ、あっ、あぁっ…!!」

不浄の月が黒の宙に浮かぶ紅蓮の夜、己の浅ましい嬌声と、己を深く貫く"この人"の荒い吐息が溢れていた。

ーー互いの躰を交えて、一体どのくらいの刻(トキ)が過ぎたのだろうか。

ただ、分かるのは。

オレは、"この人"の茨の地獄に捕らわれ、二度と逃げ出せないのだということだけで。

それ以外のことは、…永く閉ざされた禁断の扉に、鍵をかけられた。

いつから?いつまで??

…刻のことなど、全て貴方に奪われた。

悪魔のような、貴方の長い爪で熟れた尖りに触れられる度に、貴方によって融かされた骨が期待に軋む。

「あっ、はっ…、あっ、あぁっ…っっ」

おそらく大分前から繋がっている腰を激しく揺さぶられる度に、孕んでしまうのではないかと思うくらいに注がれた"この人"の欲望が泡をたて、とろりと粘質をもたせて、感覚のない下肢を伝う。

溢れ落ちた欲が、悲鳴をあげるスプリングのシーツを汚した。

沸き出る汗と、互いの白濁に濡れた欲、唾液、…涸れた涙。

様々な液体がこの情事の激しさを象するスプリングを汚し、淫猥に乱した。

快感に躰を跳ね上げさせる度に、足首に結わかれた銀の楔が音を立てる。

…まるで、「逃げられないのだと」言い聞かせるように。

…そんなことしなくとも、…既に蜘蛛に捕らわれている蝶は逃げ出すことなどできるわけがないのに。

この薔薇地獄から抜けだせれないのなら、もっともっとオレを乱して、狂わせて、…貴方に酔わせて。

…足に結わかれた鈍い銀の楔を外す為の金の錠はこの賤しき躰に流れる鮮血の味にひどく似ていて。

紅蓮の夜に散る深紅の薔薇は、オレの醜き血に染められる。

「…堂、さんっ…!!…っ、はっ、あっ…っ、…っ、…い、…た…っっ…」

熟れた尖りを指で弾かれ、窶れた腕の薄い皮を長い爪で剥かれれば、喉奥から、蚊のように細い悲痛な色を含んだ声があがった。

剥かれた皮からは、一滴、一滴と赤の雫が零れ落ちる。

「…オマエはよがり、乱れ、私にだけ溺れればいい」

耳に吹き込まれた、冷たさの中に隠された、熱のある声に背に戦慄が走った。

…あぁ、抱いているのか、抱かれているのかも分からなくほど、オレを壊して、貴方という名の華をオレに刻んで、もっと深く捕らえてくださいーー。

貴方という茨の棘の腕に抱かれ、溢れた鮮血が深紅の薔薇を咲かす。

…どうして、貴方はオレを抱くのですか…?

憎しみ?

…有り得ないが、"愛しさ"から?

…そう心中で何度問いても、答えなど出やしない。

…考えたって意味などないことは、分かっている。

"それが"恋でも殺戮でも…、…結局は同じなのだからーー。

貴方がオレに飽きたのならば、幾度となく、艶を増して乱れてみせる。

…オレは、貴方から逃げている?

…それとも、…オレが、追っている?

…それすら分かるまで、もっともっと強くオレを抱いて、貴方という名の紅蓮薔薇獄地獄に永遠に閉ざしてくださいーー。

「…君は、一体、誰の"モノ"だ?…言ってみろ。…佐伯克哉…」

…あぁ、この賤しき肉体も、親に授かったこの名も、心さえも全て全て…。

オレは蝶の微笑を粧い、掠れた声で紡いだ。

「オレは、…オレは、…貴方の"モノ"…です…っ…、…あぁっ!!」

快楽への期待感と背徳感に震えた声で告げれば、思いっきり前立腺を突かれ、喉奥から狂喜染みた声があがった。

ーー紅蓮の夜の狂おしい熱に、堕とされていくーー。


どんなに彼を貪っても、満たされることはなく寧ろ、渇いていく。

掠れた君の声を聞けば、どこか胸がじくりと、痛みに君が私を求める声を聞けば、心が満たされる。

…これが憎しみなのか、…それとも"……"なのかなんて、…知りたくなどない。

私は、堕ちていく君をこの茨の地獄に閉ざすだけだ。

窶れていく彼の躰を、私は更に深く貪った。


…"生きたい(正気でいたい)"?

"堕ちたい"(狂ってしまいたい)?

…そんなこと、もうわかりもしない。

けれど、これがもしも、中途半端な愛で、苦しむことになってしまうなら、貴方の手でオレ自身を終焉に導いて。


ああ、オレの全てを奪い取って、オレを壊して。

そして、オレの全ては永劫に貴方の腕に抱かれ、薔薇地獄へと捕らわれていくのだーー。


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