鬼畜眼鏡

□音大生×音楽教師
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オレ、佐伯克哉は今、とても…幸せです。


オレ、佐伯克哉は音大の教師をしている。

大好きな音楽室に足を踏み入れると、楽器をいじっていたのか真剣な目になっている目の色を変え、オレの名を呼びながらある生徒が抱きついてきた。

「克哉さーんっ!」

太陽のように眩しい笑みを浮かべながら、ない犬のしっぽを振るある生徒…否オレの恋人の頭を撫で、少し頬を膨らませながら宥めた。

「わっ!…こっ、こら太一!学校では「先生」って言えっていっただろっ?」

…そう、先程も言ったが、オレは教師で太一は生徒、そのうえ男同士というリスクの中で付き合っている。

…太一だって本当は、互いのことがバレたら互いともが辛いことになるのは分かっているはずだ。

なのに太一はこの音楽室のみならず、オレの名前を呼び、抱きつこうとしてくる。

…オレも、…うれしくないわけじゃない。

むしろ、…嬉しい。

だからオレはきっと本気で太一に怒れず、甘いんだろうなぁ…。

「えーっ?そんなこと言ったら克哉さんだって俺のこと太一って言ってんじゃん!」

…たしかにそうだ。

指摘され、顔が赤みを帯び、熱を宿す。

むしろオレの方が何度もそう呼んでるんじゃないのか?

穴があったら本当、入りたい。

太一から視線をそらしていると、太一はオレの腕を掴み、オレを胸に抱いた。

「あーもうっ、本当にっ、克哉さん可愛い!」

オレは恥ずかしくなって、小さい声で「そんなことないよ」と笑った。

太一の胸はすごくすごくあたたかい。

オレは眠たくなって、瞳を閉じた。

オレにぎゅっと抱きついて離れようとしない恋人を見つめる。すると、唇を重ねられた。

…まるで、それは「ラプソディー」のように甘く優しく、…あたたかいキス。

唇がすぐに離れ、またそっと優しく重なる。

大型犬のようなオレの恋人は、オレの項、額、鼻先と口づけを落とすと、オレの瞳を覗きこむようにして、じっと見据えた。

すると、オレの耳元に唇を寄せて、囁いた。

「克哉さん。俺、克哉さんがだーい好きだよっ!」

恋人の甘い甘い愛の告白に、頬が熱くなるのと同時に、心が擽ったくなる。

恋人は太陽のように、光のように眩しくあたたかく微笑んだ。

それに応えるように自分も、恋人に微笑み返す。

オレは恋人の腕を引き、唇を綻ばせながら、耳に唇を寄せ囁いた。

「…オレも。太一が大好きだよ」

耳から唇を離し、互いの視線が交わり、また一つ甘い口づけが送られる。

窓から射す、あたたかい光とひだまりに包まれながら、オレ達は抱き合い、愛を囁きあった。

オレ達の恋は、甘い甘い旋律に包まれていくのだったー。


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