鬼畜眼鏡
□太一の必殺技!
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ーカタン。
俺はヘッドホンを外して、俺を不安気に見つめる恋人を見つめた。
そして俺は震えながら叫んだ。
「〜ッ、まじすごいよっ!克哉さん」
俺は克哉さんに抱きつきながら頬擦りをした。
そう、今俺は恋人の克哉さんが歌っている歌を聴いていた。
それはあの眼鏡の方と、克哉さんがデュエットしているやつで。
…ちくしょう、俺が先にやりたかった。
そう思う程に、克哉さんは凄くうまくて…。
俺がべた褒めすると、克哉さんは顔を真っ赤にして「そんなことないよ」とはにかんだ。
…俺はこの表情(カオ)が大好きなんだ。
克哉さんの甘い甘い声がまだ俺の耳に残っていて、じんわりと俺の耳を侵す。
曲のタイトルは「contrast」。
歌詞が本当に克哉さんと眼鏡に似ていて。
克哉さんの溢れている優しさと、そして夜の克哉さんのように少し妖艶な声と歌詞。
…そして悔しいが、すっごく眼鏡の奴が上手い。
低く甘い声はきっと色んな人を堕とせそーなほどに美しくて。
…けど、本当にこんなに上手いんだったら先に俺がデュエットしたかった。
(勿論「克哉さん」とだよ!)
って言ってもまだしてないんだけどね。
やっぱりいつかお願いしようか。
いや、今言うか。
悶々と考えこんでいると、服の裾を引っ張られ「何?克哉さん」と振り向くと、何故か克哉さんは顔を赤くしたまま、ポツリと言った。
「…あのさ、太一。…太一の「歌」も俺に聴かせて…?」
…っ、何、この人。
…マジで俺を、…どこまで酔わせれば気が済むの?…あーもうっ、可愛いすぎる!!
不安気に揺れる青の目が、愛おしい。
「…駄目、かな?」
ほんの少し紡がれた言葉に、口許を少しだけ緩ませて口づければ、青の目が甘く蕩けた。
その視線にさえも、身体が熱を宿す。
真っ赤に染まる耳に唇を寄せ、意図して低く熱の篭った甘い声で「…「歌」だけでいいの?」と問えば「うっ…、太一のバカ!」と可愛らしく返された。
俺は、克哉さんの腕を掴みながら、上目遣いでお願いした。
「ねぇ克哉さん。俺とデュエットしてくれない?」
わざと甘めの声で問えば、克哉さんは「うぅ…」と唸った後「分かった。一回だけだよ?」と言ってくれた。
そう、これが俺の必殺技。
もちろん、意図してのこと。
でも…。