鬼畜眼鏡
□蒼の雫
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澄みわたる夏の青空の下、一輪の草が深い群青色の華を咲かす。
風に揺られては華を散らせ、母なる大地に身を沈ませる。
己も華同様、あの人に身を沈ませ、あの人に深く溺れる。
立波草。華を散らせ母なる大地に命を捧ぐ。
花言葉は。
(貴方に)命を捧げます。
「んっ…ふっ…あ、…くぅ、…」
熱を帯びる漆黒の夏の夜の中、オレ佐伯克哉はある人と身体を重ねていた。
自ら繋がっている腰を振るい、自分を貫くある人の熱を宿した自身を甘く、浅ましく締め付ける。
「あ…っ、は…っ、…、堂さん、御堂さん…、キモ…チ、いい…ですか…?」
途切れ途切れになりながら、自分を貫く愛しい人の名を呼び、問いかける。
熱を帯びた己の瞳に、アメシストのように艶めき美しい瞳が自分を捕らえる。
「…っ、克哉…、克哉…」
低く掠れた熱を帯びた声で名を囁かれ、背筋に戦慄が走り躯をふるりと震わせた。
「あ…っ、あっ、あぁっ!好き…っ、好き!御堂…さんっ…!!」
腰を激しく振るいながら、狂ったように甲高い嬌声を上げ、何度も愛しい人の名を紡ぐ。
ーあぁ、幸せすぎる。
どうしようもなく、たまらない程に愛しい人と共に生きれて。
オレはきっと、きっと。何かあったら貴方を一番に考えてしまう。
もしも誰かが貴方を傷つけようとするのならばオレはきっと、容赦なく相手を陥れ、何をしてでも貴方を護ろうとしてしまう。
オレはそれほどに貴方が好きで、好きすぎて…狂っている。
ねぇ、孝典さん。
貴方はこんな浅ましく穢れているオレでも愛してくれますか?
繋がる喜びと、不安に己の蒼の瞳から涙が一筋零れた。
それを不安そうに目の前にいる愛しい人は紫の瞳を揺らし、零れた蒼の雫を舌で舐めとる。
「…私は、君が思っている以上に君に、…溺れている。…そうだろう?…克哉…」
…あぁ、やっぱりこの人がいとおしい。
好き、好き、好き。
何度言っても足りない程ー…。
熱を帯びる熱い夏の夜をやわらかな風が包み、群青色の華を運ぶ。
そして、母なる大地に身を沈ませる。
…自分も同じだ。
愛しい人に身を沈ませ、甘えてしまう。
「孝典さん…、愛しています」
漆黒に佇む月の光に照らされながら、愛しい人と口づけをかわす。
それは貴方にオレの命を捧ぐ証。
「私もだ。…ずっと…」
愛しい人の囁きに、喜びが滲んだ蒼の雫を一筋、流した。
ー何があっても、私は貴方を護ります。
何があっても、私は貴方に私の命(生涯)を渡します。
それくらいに、貴方が愛しい。
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