歌詞題材

□ひとりぼっちの運命/雲雀恭弥
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―イライラ、する。

キャスターがついている革張りの椅子に座り、大量の書類にペンを走らせている雲雀は、深いため息を吐いた。

苛立ちの原因は、おそらく捌いている大量の書類からでもあるが、大幅を占めているのはまた違うもの。

目を伏せれば、勝手に脳裏に浮かぶ、いつも自分に対して怯えた様子を窺わせる、とある草食動物に内心で毒を吐いた。

また勝手に、僕の領域に踏み込んで、視界に入らないでくれない?

至極理不尽なことを雲雀は抱いているのだが、専ら横暴な雲雀はそれに気づかない。

寧ろ、―認めたく、ないのだ。

たった一人、その他大勢の草食動物にしか括られない筈の人間に、こんなにも執着している自分がいる。

こんな、……―「愛」と呼ばれるであろう感情、僕は、知らない―。

苛立ち気に回していたペンを、壁に真っ直ぐに投げつけた。
重力の抵抗を払い除け、一陣の風に乗ったそれは、鋭い軌跡を描いて、壁に突き刺さる。
パラパラと、ペンにより砕けた壁の塗装が、床を汚した。

―ホントに、イライラする。

他の草食動物と群れ、僕には見せない笑顔を、群れには見せていること。
色々な意味でムカついたから咬み殺し、傷ついた他の草食動物を見ては、心配そうに涙目になることも。

どれも、弱虫の仕業だとわかっている。
だからこそ、イライラするし、―「 」。

これ以上、―あるがままの姿で、なすがままの心で、生きていく僕の邪魔しないで。
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