Novel short

少女柳の独白
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三本の支えは決して揺るがない。
四本の支えよりも安定感がある。
だから三強≠焉Aそうなのだと信じていた。


弦一郎が長年の片想いに終止符を打ち精市との恋を実らせた時は、漸くかと呆れながらも二人の幸せを心から祝福していた。





「安心してよ蓮二!俺達が恋人になっても、俺達の友情に変わりはないよ!」





そう精市も弦一郎も言う。
だが、登下校の時、二人で人混みから消えた時等は友人≠フ二人ではなく恋人≠フ二人である為そういう時は黙って身を引くのが暗黙の了解となっていた。
そして、二人きりで弦一郎と話す事もしないよう心掛けている。
私が勝手にしている事だが、自分の恋人が仲の良い異性と二人だけでいるのは気持ちの良いものでは無いだろう。





「蓮二。つかぬ事を訊くが、最近俺の事を避けていないか?」



「そうか?気のせいだと思うぞ」



「しかし…」



「あ、精市がD組のチャラチャラした男に話かけられているぞ」



「何ぃっ!!?幸村ぁぁぁ!!」





去り行く弦一郎の背を見ながら、無性に泣きたくなったのは何故なのか、私には分からなかった。
私達は何も変わっていない。
ただ登下校が別になって二人きりで話す事が減っただけだ。
精市も弦一郎も何も変わらない。
私達は立海テニス部の三本柱で、決して揺るがない三強なのだ。
なのに、何故こんなにも胸が痛む何故こんなにも虚しいだろうか。
前と何も変わっていない筈なのに世界が違う気がしてならない。
ここは何処なのだろうか、本当に何も変わっていないのだろうか。


変わったのは何なんだろうか…。






「蓮二、何か変わったよね」



「俺達が付き合い始めてからさ、取っ付き難くなったって言うか…付き合い悪いって言うか……」



「とにかく、蓮二変わったよ」






変わったのは世界でも、それこそ精市でも、弦一郎でも無かった。
変わっていたのは私自身≠セ。

二人を気遣っているふりをして、私は二人の事を避けていた。
私達の関係が変わってしまうのが怖くて、怖くて仕方がなくて。
二人が付き合った事が嬉しかった反面、私だけ取り残されたような気がしていた。
怖かった寂しかった切なかった。






「何があってもお前は俺の大切な親友の柳蓮二だよ。たとえ俺達が付き合っても別れたとしても親友には変わりないんだ。今まで通り接してくれて構わないし、むしろ今まで通りにしてろ!」



「…そうか、ならば遠慮するのは止めよう。ついでにデータを取らせてくれ」



「やはりお前はそうしている方が良いな」






精市と弦一郎の言った通り、私達は今までと変わらなかった。
たまに精市のノロケ話を聞いて、弦一郎と将棋で張り合って(勿論私が勝った)、今までと変わらず三人で過ごす。
友人として仲間として三強として精市と弦一郎と私は共にいた。
二人が恋人になっても、私達は何も変わらない。








一緒にテニスをして、
一緒に買い物をして、
一緒に笑い合って。













「真田!今月の24日と25日の予定空けといてね!」



「うむ、分かっている」



「真田ん家に泊まるの久しぶりだな〜」

















ただ、もう二度と三人≠セけで季節のイベントを過ごす事は無くなってしまったが─────…。

































「柳さん!」



「ん、何だ赤也?」



「24日は俺と過ごして下さい!」



「え…」



「俺、柳さんが好きっス!」



















この年の冬から、私達は三人≠ナ季節のイベントを過ごすことは無くなった────────…。
















(柳さん好きっス!)


(私も好きだよ。赤也)
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