Novel short

彼女と僕の違い
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※謙光♀になるまで













ウチは謙也さんの事が好きや。


勿論、恋愛的な意味で。






「神尾って50m何秒なんやろ」






全国大会が終わってから謙也さんは神尾の話ばっかや。
神尾ちゅーのは不動峰中の選手で謙也さんの従兄弟が通っとる学校の部長さんの彼女や。
近いんか遠いんか、よう分からん知り合いやな。
説明もくどいし無駄に長いし。

その神尾が謙也さんに負けず劣らず足が速くて、謙也さんは興味を持ってしもうたらしい。
何かについては「神尾、神尾」て煩いし、謙也さんが好きなウチとしてはオモロない。
東京におる従兄弟伝いで跡部さんに神尾の事を聞いたりしてるし。
(教えて貰えんかったらしいが)やっぱムカつくもんはムカつく。

極めつけが、この一言。





「神尾みたいな後輩欲しいわ」






何やねんそれ。
ウチじゃ役不足っちゅう事なん?

ウチやて神尾と同じ二年や。
同じ黒髪で長さも変わらへん。
テニスだって負けんもん。





せやけど……。





ウチは神尾と違って素直やない。
口数少ないしピアス開いとるし。
神尾みたいなスピードも無い。






そうやって神尾とウチの違いを探してみて、ちょっと落ち込んだ。
まぁ、あんなイケメンと付き合うとる神尾が謙也さんに見向きするとは思えへんけど、謙也さんが神尾に恋するんは別や。


もしかしたら、神尾に惚れてまうかもしれへんって思い始めたのは何時やったか。
白石部長が言ってったんやけど謙也さんの好きなタイプって無邪気な子やし、スピードやらリズムやらで気合いそうやし。
考えれば考えるほど不安になってきてしもうて。






「なぁ財前。神尾って何秒くらいやと思う?」



「さあ、知らないっスわ」






ホンマ、ムカつく。
ウチの気も知らんと言いよって。


ウチ、神尾の事なんか知らん。
アンタの好きなタイプとかも関係あらへん。
彼氏が居る女なんか止めとき。
あんなイケメンとアンタじゃ勝負にもならへんて。






「ねぇ、謙也さん」



「んー?何やー?」






髪の毛を弄ってる謙也さんの背中に、思いきり飛び付いた。
驚いた顔したと思えば、謙也さんは見る見る顔を真っ赤にさせる。
謙也さんが固まっとるのを好機やと思うて、ウチはその大きく見開かれた瞳を見上げて。










「謙也さん、メッチャ好き」






そう、ウチが言ったら。
謙也さんはメッチャ必死な顔で






(俺も、て笑いながら言った)
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