Novel parallel

□棘に射抜かれた心
1ページ/8ページ

 
 
 
世界の主は《龍》だった。


森や泉には獣や精霊が棲み、
高地や火山は《龍》が棲んでいた


太古の昔、世界の始祖となる五匹の龍がいた


《火》《雷》《風》《水》《氷》の力を持った五匹の龍から数々の生き物が誕生したのだと言い伝えられている


その始祖となる五大龍の力をより濃く引いた存在が今の世界を納める《龍》になった

その五大龍の子孫に当たる《龍》は其々の国を代々守り抜いている


五つの種族に別れていた龍族だが異種族との混血が誕生したり、
状況に応じて進化を重ねて行き、今では二百以上の種族になった



肺を失い水中で活動する者


翼を失い陸地で活動する者


視を失い地中で活動する者




様々な種族が混じり日々増え続けている






そして《雷》の五大龍の血を最も色濃く引いた龍が納める《国》で新たな王龍が誕生してから三年。
《雷の国》は峡谷に囲まれており他国に比べて閉鎖的な国だった。そして、二百年の間《雷の国》の王龍は暴君として他国にも名を広げていた。


《雷の国》の龍は凶暴で危険な種族だと誰もが思っていた程だ。
強ち間違いでは無く先代の龍王とその参謀や騎士団の龍は暴れ者で武力や圧力で民を苦しめていた。そんな龍王達の暴挙に不満を抱く民も多く存在しており、三年前、遂に一揆が起きる。
一揆の中心は七匹の若い龍達。


その時に一揆の統率を勤めたのが現《雷の国》の龍王、橘だった。
彼が龍王を即位してから約三年。


《雷の国》は遥かに棲み易い国となり平和な国へと変わった。






『橘さん!東谷のパトロール終わりました!』



橘「何か変わった事はあったか」



『いいえ!何時も通りでした!』



橘「そうか、ご苦労だったな」








そう部下を労って橘は笑った。
報告に来た部下、神尾アキラは、三年前の一揆の中心人物であり、橘が信頼を置く側近の一人だ。
女でありながら神尾の戦闘能力は橘に次いで《雷の国》No.2であり橘の実妹、杏の護衛を任せている程だった。
神尾の属性は《風》であり、翼は攻撃と防御の為に飛行力は無いが自身の能力で風を起こす事で飛行は可能だ。






橘「杏を頼んだぞ」



『御意!』






人形(ヒトカタ)から龍に戻り、棘の様な翼に風を乗せて飛び立つ神尾の背を見送った橘は、残りの執務に手を伸ばした。








そして、



閉鎖的な土地である《雷の国》の革命は未だ他国に知られていない







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ