無N

□妻の憂鬱
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「おはよう伏犠さん、よく眠れた?」
「うむ!すっきりじゃ」
「よかった!…あれ、悟空大丈夫?」
「……」

爽やかな笑顔の伏犠の後ろから目の下に隈を拵えた悟空がフラフラと出てくる。そのままソファに倒れ込んだ。

「…く、そ…じじい…っ」
「…え?なあに悟空?」
「なんでも…ないっす」

寝惚けた伏犠に女カと勘違いされ夜な夜な襲われかけたことは被害者の悟空しか知らない。



「そういえば」
「ん?」
「喧嘩の原因って、何だったのかな?」
「…それが…」

静かにコーヒーカップを置いて俯く伏犠に三蔵と悟空は黙って先を促す。

「教えてくれんのじゃ」
「え?」
「自分で分かるまで戻ってくるな、と…」
「んー…なんだろうねぇ」


しくしく泣き出す伏犠と頭を捻る三蔵を悟空は白い目で見ていた。

(…ありゃ伏犠の日常を疑うぜ…この俺より酷ぇもんな。そりゃ女カも怒るよ)

カフェオレでホットサンドを流し込むと悟空は伏犠を睨み付ける。


「あんたさ、女カの気持ちになったことある?」
「…そりゃ、まあ」
「じゃお前が女カのやってる立場になってみろよ」

意味が分からず伏犠は口を開ける。

「例えばさ!昨日の風呂!滅茶苦茶になってたし、テレビ点けっぱだし、夜中イビキうるせぇし!」
「……」
「そうゆうとこなんじゃねーの?理由」
「…なん、じゃと」
「悟空、凄いね!」
「…嫌でも分かりますよ」

伏犠はワナワナ震えだす。
すると突然三蔵が頭を傾げた。

「…んー…でもね、」
「「?」」
「凄く今更じゃないかな?」
「え?」
「だって、もしもそれが理由だったとしたらもっと前に愛想を尽かしてると思うの。ついこの前一緒に住み始めた訳じゃないんだし…」
「あー確かに」
「でも悟空が言ってることもあるかも。仕事を増やされるのって奥さん嫌だし」
「…じゃあ一番の理由ってなんなんすかね。伏犠、心当たりねーの…うわっ」

伏犠は床に倒れ込み号泣していた。

「何故なのじゃ女カぁ!分からん!儂には全く分からん!!」
「…きもい」
「うう…儂はっこんなにも女カを愛しとるのにー!!」

「それだぁ!」

「…ん?」

三蔵は立ち上がり、満面の笑みで伏犠を見つめる。

「伏犠さんの気持ちを正直に伝えるの!」
「気持ち?」
「そう!理由は分からないけれど、女カさんが大好きだって!」
「誤魔化し…?」
「違うよ悟空!女のコは愛の言葉が大好きなんだよ!」
「…はあ」
「好きだよって言われたらなんだって許しちゃうの!」
「…いや、でも女カだし」
「大丈夫!女カさんだって恋する女のコなんだもの!」

…戸籍上はね
その言葉を飲み込んで悟空は伏犠に目をやる。子犬の様な瞳で三蔵を見上げていた。


「それで…女カは許してくれるかのう」
「うん!」
「怖いー!三蔵ぉ、儂ぁ勇気がない!」
「伏犠さんなら大丈夫!元気だして?」
「…男がウジウジすんなよ。だから女カに愛想つかされんだろが」
「っうわーん!」
「やべ」
「悟空!」

♪ピンポーン

「あれ、こんな朝にお客さんだ」


三蔵はパタパタと玄関へ駆けつける。そして歓喜の声が上がった。


「女カさん!」

「「?!」」

その名前に二人はどたんばたんと部屋の奥へ転がり込む。

「すまないな休みの早朝に…」
「おはよう!どうしたの?」
「…伏犠が訪ねて来なかったか?」
「え?」
「その…昨日喧嘩をしてな。追い出してしまったのだ」
「……」
「少々強く言い過ぎてしまったこと詫びたいのだが…まだ帰ってきていなくて」

しょぼんと肩を下げ珍しく落ち込む女カ。三蔵は微笑むと玄関に押し込んだ。

「?」
「ふふ!上がって女カさん」

リビングに入ると、炬燵からでた伏犠の片足を引っ張る悟空がいた。


「ぐっ…じじい!いい加減出てこいよ!」
「嫌じゃー!!」

どたばた暴れる二人を見て女カは呟いた。

「…伏犠」
「!」

その声にびくんと体を震わせるとゆっくり炬燵から這い出る。

「じょ、女カ…」
「……」
「……」
「…その、」
「すまなかった女カ!」
「!」

伏犠は土下座する。

「御主が怒っておる理由は分からん!じゃが、儂は!」

そして、女カに抱き着こうと…

「誰よりも女カを愛しとるんぶべら!」

して盛大なビンタを喰らった。


「え、ちょ、」

「そうか、私は普通だ」

「ええええ」
「言わんこっちゃねぇ…」

先程までとは打って変わり女カはつーんとそっぽを向いてしまった。

「女カさん…」
「三蔵、」
「は、はい!」
「世話になったな。有難う」
「え…」
「帰るぞ…伏犠」
「しっしかし」
「もう良い…阿呆らしくなった」

そう言うと女カは颯爽と家を出ていく。そして転びながら伏犠もそれを追いかけて行った。


「こ…こえー」
「…ふふ。やっぱり女カさん、伏犠さんが大好きなんだね」
「そうっすかぁ?!」
「うん!目で分かるよ!」



【 妻の憂鬱 】


数日後
「三蔵ぉ…悟空ぅ…」
「いい加減にしろ!!」


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書いてる本人が楽しいだけの駄文\(^O^)/実際の伏犠はこんな阿呆じゃない笑

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