無N
□唯、愛してる
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【第十伍章】
昼下がり。
目を覚ました悟空は宮殿を彷徨いていた。
「……おっかしーな」
三蔵の姿が見当たらなかった。
全ての部屋を回った。
「……」
悟空は首を傾げながら食卓の間に戻る。
「…ありゃ?」
仙桃の下に一枚の置き手紙が置かれていた。掴み取ると手早く文面に目を走らせる。
「…人界に行ってきます…騒ぎを静めるため…女カさん達も一緒です…遅くても明後日には戻ります。……まじかよ!」
遠呂智本人が消滅しても悪い膿は残るもので。興奮を抑えきれずにいる残党が未だに人界で暴れていた。
痺れをきらした三人の仙人はその聖なる力で誅してやろうと三蔵を加えて再び人界へ降り立ったのだった。
「…残党、ねぇ…」
己の立場を思い出し苦笑いする。
次に浮かぶのは嬉しそうに冷笑する女カと太公望の顔。
「おっかねぇ〜。俺の身も危ねぇってか」
紙を丸め塵箱に放り投げる。
「ま、お師匠様がいるから平気か!」
(………)
「…大丈夫かな、あの人」
闘いを好まない師匠が人間に手を出せるとは思わない。なんだかもやもやと後味が悪くなる悟空だったが、自分の部屋へと戻って行った。
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