novel

□美しき我が君
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「まじかよ、と」


レノは社長室へ足を踏み入れた瞬間に唖然としてしまった。


あろうことかあの社長が大きすぎるデスクの上に突っ伏して眠っているではないか。
己の崩した姿を見せることなど、況してやこのオフィスでは絶対にあり得なかった。つねに張りつめた雰囲気を身に纏い、厳粛で冷徹で、妖艶で。
仕事中だけでなく公私共々、その綺麗な顔を歪め欠伸をしているところさえ見たことがない。

側で守り続けてきたタークスでさえも。



「珍しーもんが拝めたな」

先程までお使いを頼んできたツォンに対しぶつくさ文句を言っていたことも忘れ、レノはニッと口端を上げてゆっくりと近付く。

持ってきた書類をそっと置くとデスクの前でしゃがむ。顎をその上に乗せ、顔を覗き込んだ。


「…彫刻みてぇだぞ、と」

透き通るような白い肌、真っ直ぐに通った鼻筋、程好く色付いた形の良い口、シャープな顎。
どれをとっても一級品だった。


「親子とは思えねーな…綺麗すぎだろ」


陰った空から注がれる僅かな光がルーファウスの顔に影を作り出し、その整った骨格がより浮き彫りになる。


触れたら壊れてしまいそうな、そんな儚くも美しいこの男を守っている自分。
常に抜け目なく、細く微笑みながら総てを我が手中へと誘う世界トップの寝顔。

どれもが特別で、自分にしか味わえないこの優越感。


レノは込み上げる気持ちに微笑んだ。


「神羅の頂は眩しいぞ、と」


小さく動く唇から視線を動かす。

キラキラと輝く金髪の下、今は閉ざされている薄い瞼の端にびっしりと並ぶ睫毛。

「…って睫毛ながっ!?…3pはあんじゃねーの?…女顔負けだな」


ずいっと顔を近付け眺める。

と、青い瞳に赤髪の青年が映った。


「……ん?」

「そんなに見つめるな、レノ…」

「………」



「ぎゃーー!!!」


レノは大声をあげると慌てて後ろに飛び退いた。ルーファウスは体を起こしぐぐっと伸びる。下がった前髪をかきあげると今だわなわなと震える部下に微笑んだ。


「御早う」
「しゃ、しゃ、社長ォ!いつから起きてたんすか?!」
「何時だろうな」
「はぁ〜?!」
「お前があまりに熱い視線を送ってくるものだからな。起きてしまった」
「…ちょ、まじ…性格悪ぃーよ…!」
「今更言うことでもあるまい」

項垂れるレノ。
静まらない心音。


「人の寝顔を盗み見るとは…いい趣味をしているな」
「ぬ、盗み見るっつーか…っ」
「…見惚れたか?」
「ぃっ?!」

「そんなに私の寝顔が見たいなら…見せてやろう、毎朝」
「ーーー」


レノの顔が真っ赤になった。
ルーファウスは声を出して笑うと頬杖をついて見上げる。


「冗談だ」
「!」
「あまりそう、可愛いリアクションをとるなよレノ…」


妖艶な上目遣いにレノの脳内はついにベルを鳴らした。


「勘弁してくれよ、と…社長!」




【 美しき我が君 】



「けど、やっぱ社長は眼を開けていた方が断然男前だぞ、と」
「ふふ…軽口は残業の元だぞ」
「う、嘘じゃないってば!?」


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社長は誘い受け\(^O^)/これ絶対!

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