幼女

□not独り
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脳裏に焼き付いている大好きだったカタチが崩れていく。

そしてその残骸は黒い灰となって舞う。


幾つも幾つも、次々に場面が換わっては灰が舞った。


一番最後の場面。
ソレはこちらに手を伸ばすも、身体全体が朽ちていく。

しかしその瞳は、愛しそうに何かを見据えていた。

そして何かを呟いた。





「ーーーっ!!」


Xは飛び起きた。


「はぁっはぁっはぁっ…!」


荒れる息。
額には玉の様な汗が髪の毛と共に張り付いていた。

「ーーーっ。」

鼻の奥がツンと痛む。


Xは、自分の見た夢の正体が何だったのか理解してしまったのだ。


居た堪れなくなったXは部屋を出て走る。

回廊も使わずに、その長い無機質な廊下を全速力で走った。


そして広間に駆け込み、立っていたゼムナスの足元に勢い良く抱きついた。


ゼム「……?」

驚く機関員たち。

いつもなら可愛らしく名前を呼びながら飛び込んでくるXが、無言で突進してきたからだった。


微動だにせず異様な雰囲気を醸し出すX。

ゼム「…一体…どうしたのだ…?」

話しかけるも返事はない。


デミ「…なんかいつもと違うね」
ルク「怖い夢でも見たのではないか?」
デミ「それだけならいいけど…」

後方で見守るデミックスとルクソード。


ゼム「…X、」

ゼムナスはしゃがんでXを身体から離した。

ゼム「ーーー!」

Xの小さい顔は涙でくちゃくちゃになっていた。


「…ひくっ…ひくっ…っ」
デミ「わっXちゃん…?!」
ルク「…これは…」

様子のおかしいXに気付き、二人も傍に寄る。


ゼム「何があった?」

優しくゆっくりと喋りかけるとXは小さな嗚咽を漏らしながら口を開いた。


「…みんなが…っ」
ゼム「…あぁ」
「パパもママもっ…でみもルクソォドさんも…」
デミ「…??」
「みんな…消えちゃう怖い夢…っ」
ルク「……消える?」
「…灰みたいに…消えちゃったの…ッ!」


なんとかそう言い切ると、啖呵を切ったかの様に再び泣き出した。


デミ「よーしよし、怖かったよね」
「うあーん!!」

デミックスはXの背中を擦った。


「みんなっ悲しそうに…ひくっ…Xの方見てた…っ」
デミ「うん」
「…からだがっボロボロになって…消えていって…!」
ルク「…落ち着きなさいX」

ルクソードに頭を撫でられ、一息いれるとゼムナスに視線を向けた。


「ーーX、パパが伸ばした手…にぎれなかったよ…」
ゼム「………。」
「……っそのまま消えちゃったよ!!」


顔を真っ赤にしながら泣くXのコートの袖は水が滴る程にまで濡れていた。



「…みんな、消えないで…X独りなんて悲しいよ…っ」


ゼム「…先程から…何を言っている…?」

「…?」


ゼム「…私達は…キングダムハーツによって完全な存在になるまで…消えはしない」
「……!」


ゼム「…仮に…何かあったとしても…」

ゼムナスはXを抱き上げた。


ゼム「…X、お前を独りにはさせん」


「…パ…パ、」


デミ「大好きなXちゃん独り残して消えられないよー♪」
ルク「姫様を護るという任務がある」

「でみ、ルクソォドさん…!」


Xの顔に笑顔が戻る。


ゼム「…そうゆうことだ。例えお前が嫌がっても…離すことはない」
「嫌がらないよ、X、みんなが大好きだもん!」


抱き締めた時触れた袖は、もう乾いていた。




【 not独り 】



「…目ぇ覚めちゃった…」
「俺が添い寝「沈みたまえ」ぐはっ」
「X…一緒に寝てやろう」
「ほんとぉ?!やったぁー♪」
「…ううう…Xちゃん…」

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