幼女
□能力
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ラク「見てよ〜50%OFFだったの!」
シグ「あの店の酒は湿気てたな」
デミ「店長がおまけしてくれたぁ♪」
ロク「さっき客同士喧嘩してんの見てさ」
アク「ありゃ凄かった」
「………」
外から帰ってくる度に毎度行われる話をXは全く理解出来なかった。
(50ぱーせんと?店?てんちょぉ?おまけ?客??)
Xはここに来てからは一度も城外に出たことがなかったのだ。
知らない単語や持ち帰ってくる紙袋たち。
Xの興味が膨らんだ。
「Xもお外に行きたい!!」
広間でくつろぐ機関員は一瞬なして表情を硬くした。
サイ「駄目だ」
「なんで?!」
ゼク「城の外には危険が沢山潜んでいるのです」
ザル「お前には危ない」
「みんなはいいのになんでXはだめなの?」
ヴィ「お前は戦えないだろうが」
「でも…っ」
ラク「馬鹿ねぇ。あんたに何かあったら困るから言ってんの!」
「………」
心配の色でXに接する機関員達だったが幼いXに伝わる筈もなく。
一人前として扱ってもらえないと解釈したXは不貞腐れて出ていってしまった。
シオ「…行っちゃったね」
シグ「難しーね、餓鬼ってのは」
ラク「だから嫌なのよ」
デミ「じゃあラクシーヌはXが嫌いなの?」
ラク「いつ私がそんなこと言った?」
デミ「…ごめんなさぃッ」
「ーーーパパ!!」
背後から背中に飛び乗る。
ゼム「…どうした?」
「Xもお外行きたい!」
ゼム「…?」
「みんなみたいに城の外に行きたいの」
眉を下げて訴えるX。
ゼム「……」
「Xとパパはお外で出会ったでしょ?だからお外なんてX平気だよ?」
必死に懇願するも、ゼムナスは黙ったままだった。
「…いいでしょ?!」
ゼム「駄目だ」
「……!!」
ゼム「…お前が…どんな力を秘めているかを知らない。戦闘能力の有無すらな。…そんな不安定なXを外に出せない」
ゼムナスもまた、眉を下げて言った。
「〜〜っ」
ゼム「…すまない」
ついに大きな紅い目から大粒の涙が零れる。
「パパのばかぁー!」
Xは腕の中から器用に飛び降りると走り去ってしまった。
ゼム「…X、」
初めての反抗と罵声にゼムナスは立ち尽くしてしまった。
が、ハッと我に帰り青ざめる。
Xなら一人で外に行きかねない。
ゼム「………」
ゼムナスは回廊に消えた。
一方Xは、ゼムナスに連れられ初めて城へ入った時の道のりを思い出し足を進めていた。
「…あったぁ!!」
城から地面へと下りる道なき道。
不気味に青白く光る道をXはスキップして進む。
そして最後の一歩、地面に足をついた。
「わぁい!!Xもお外に出れたんだぁ!」
脳裏に浮かぶのは一人前扱いをする機関員達。
「パパも誉めてくれるかな」
Xは有頂天だって歩きだした。
「…わぁ…!」
妖しく光るネオン街に目を奪われる。
どの店にもノーバディがうじゃうじゃ。
楽しみながら見て回っていると。
「…ん?」
クリーパーとシャドウが店の外で睨み合っていた。
シャドウは怪我をしている。
「けんかはだめよ」
Xがシャドウの前に立つ。
しかし理性がきく筈もなく飛びかかってくる。
「っ!!」
ゼム「X!」
ゼムナスがXを見つけたのは、シャドウを抱くXをクリーパーが襲う、その瞬間。
守ろうと手を出した。
刹那、その場に閃光が走った。
ゼム「……?!」
Xとシャドウが丸い光の球体に包まれていた。
まもなくしてその球体は砕ける。
ゼムナスは駆け寄った。
「…パ、パ…」
見たことのない怒りの顔を呆然と見上げる。
そしてパンッという音と共に頬に痛みが。
眉間に皺を寄せていたゼムナスはXを抱くとため息を溢した。
ゼム「…無事で…よかった」
「…ごめんなさい…!」
ポロポロと泣き出すX。
そしてその涙がシャドウに落ちると傷が消えた。
ゼム「…! ……帰るぞ」
「うん…!」
二人が歩きだすと背後からシャドウがついてくる。
「…お友達になりたいって」
Xはゼムナスを見上げる。
ゼム「…好きにしなさい」
「やったぁ!!」
Xはシャドウを抱っこすると再び歩きだした。
【 能力 】
「…リフレクやケアルといい…これといい…お前の力は不思議だ」
「パパも守ってあげるからね!」
「…頼もしい」