幼女

□ママ
1ページ/1ページ




「サイクス、」


指導者の腕の中で微笑むモノにサイクスは一瞬己の目を疑った。


「ソレは一体」
「今すぐこの子に合うコートを…作ってくれないか」

言うより早くゼムナスは告げる。



「…か、構わないが…」

「…よし…さぁX、彼に服を貰え…」
「おようふく?」

Xは今纏っている黒い布切れに触る。

「あぁ、私と同じ」
「パパとおそろい?!」

(…パパ?!)

頷くゼムナスと笑う謎の幼女に頭を抱えるサイクス。


「頼んだぞ…」

闇へ消えるパパを見送ったXは後ろにいるサイクスを見つめた。


「こんにちわ!!」
「…お前は…」
「Xだよ」

屈託のない笑顔にサイクスは一度身震いすると無機質な声でこっちだ、と歩きだした。




「着ろ」

着方が分からないのか袖に頭を入れようとする。

「こっちだ」

心情とは裏腹に自然と手つきが優しくなる自分にサイクスは少し戸惑った。

(意味が分からん)


「…少しデカイな」
「これがいい!」
「?」
「作ってくれたから、これでいいの!」

大きすぎるフードをかぶって走り出すX。案の定、転ぶ。

サイクスは腕をとってその軽い身体を抱き上げる。

「大丈夫か」
「うん!こんなの痛くないよ」
「気をつけろ」
「はぁい!」
「………」



(さっきから俺は何をしている?)
(心にもないことを。)
(…やはり動作だけは誤魔化せないのか。)


月に問いかける癖。

Xは首を傾げた。


「あなたもお月さまからきたの?」
「は?」
「お月さまが好きなの?」

「…サイクスは…月の力を借りているのだ…」
「パパ!!!」


Xは器用にサイクスの腕からゼムナスへジャンプ。

「ゼムナス…」

寂しくなった両腕。


「サイクスは…月の化身…」
「けしん?」
「サイクスは月」
「…おいゼムナス、」

「じゃあママだね!」

「マ…ッ?!」
「ママはおさいほうじょおず!」




【 ママ 】



「…よかったな」
「…けしかけたなゼムナス」
「パパとママとおそろいのおようふくだねー!」
「……///」
(…やはり嬉しいんだな。)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ