赤い光

□8時間目
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『ふー…』

水音を立てながら熱い湯船につかり、深く息を吐いた。浮かぶ髪を一纏めに結び、手摺に頭を預けそっと目を閉じる。疲れが霧散すると同時に今日起きた事が脳裏に横切っては自分の未熟さに嫌気が差すものだ。

前髪をかきあげ、湯船から上がる。どうにも今はゆっくりとつかる気分には到底なれやしなかった。



頭をガシガシと拭きながら
のれんを潜ると

何やら男子風呂の前に集まる渚達が居た。

私が出てきたことに気づいてないのか声をかける


『よっ、渚。中村さん達も男子風呂の前で集まっちゃって…覗き?』


私の突然の登場に驚いたのか揃いも揃って皆、肩を揺らし勢い良くこちらを振り向く。


「遊乃さん!…そう、覗きらしいよ」


あははと苦笑いしている渚の隣では
覗きはオレらの仕事だろ?と驚く岡島君。


なんだか面白そうなので一緒に脱衣所をのぞき込む。

そこにかけてあった服は……


『あぁ…うん…なるほどね……』


そう、殺せんせーの服だった。
この時点で展開の予想はついたので一足先に部屋に戻ることにした。


何故か物凄く残念そうにしていた岡島君は見なかったことにしようそうしよう…。


―――


大部屋のふすまを開けるとそこには1人でビールを飲んでる美女…もといイリーナの姿があった。


『あれ、イリーナ…1人なんて珍しい。……そういえば話すの初めてだね』


隣に腰掛け一本貰ってもいい?とたずねると好きにしなさい、と返事が来たので遠慮なくいただく。


プシュッと音が響き喉に冷たい感触が流れ込む。


『はぁっ!…うまー、風呂上がりのビールはいいね』


「……大変だったみたいね。」


イリーナの言葉を聞きながら無言でタバコを取り出し火をつける。


ふぅーっと煙と一緒に息を吐き、そこでやっとまあね…と答えた。


『……ホント、油断したよ。私が居ながら。烏間にもさっき怒られたとこ』


意識を失う直前
あの呆然としたカルマの姿を思い出し1人舌打ちをする。


本当だったら拐われる前に
あんなガキ共、瞬殺に出来たはずなのだ。

いや、出来なきゃいけなかった。


もう一度、舌打ちをし
一気にビール缶を空にする。


その光景に何を思ったのか

「ま、まぁ、しょうがないわよ。いくらプロといえど油断するときは油断するわ。あの子達が無事だったから良かったじゃないの」


視線を逸らし顔を赤く染め
早口にそう言い立てる

…何この女、めちゃくちゃ可愛い


『なに、慰めてくれてるの?優し〜とこあるんだね〜』


ニヤケを隠すこともせず
肘でイリーナをつつく


真っ赤な顔で調子に乗るな!!なんて怒られたが逆効果だということを知らないのだろうか。


『ふふっ、ありがとうイリーナ』


真っ直ぐに目を見て
思ったことを伝える。


ふすまの外からガヤガヤと
女子生徒達の声が聞こえ
私はプシュッとまた缶を開けた。
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