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□アーキルの特別
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カツンッ、カツンッと一定のリズムを発している。
その音は私の履いているヒールが原因だろう。
(久しぶりに、来たな…)
私はアーキルと久々に会える喜びと共にそんなことを考えていた。
私とアーキルは幼なじみだ。
女嫌いのアーキルが唯一、心を許してくれている存在。
だから私とアーキルは幼なじみ。
私のこの気持ちを除いては。
そんなことを考えていると扉の前についた。
コンコンと軽快なノックをし
名前を告げ中に入る
そこには昔から変わらない
笑顔が私を待ち受けていた。
アズハル「やあ、可愛子ちゅあん久しぶりじゃないか。アーキルから今日ここに来るって聞いてね、待ちわびていたよ。その深海よりも深く美しい双眸に見つめられるのも久しいな。…と可愛子ちゅあんどうした?具合でも悪いのか!?」
肩を震わす私を心配したのだろうか。オロオロしながら此方に近づいて来た。だが、心配無用だ。
『くっ、あはは!!アズハルってば全く変わってないのね』
アズハル「ふっ、そういう可愛子ちゅあんは一段と綺麗になったな」
突然、私の頬に手を添えながら真面目な顔でそんなことを言うもんだから顔に熱が集まるのを感じる。
そのやりとりを見ていてか否か後ろからゴッホンと大袈裟な咳払いが聞こえてきた。
「兄上。可愛子ちゅあんを口説くのはおやめください。」
私が1番会いたかった人物の声だった。
後ろを振り返り満面の笑顔で愛しい人を見据える。
『アーキル!!…久しぶり…!!』
「久しぶりじゃなぁ、可愛子ちゅあん会いたかったぞ」
きっと意味は、ない。
そう言い聞かせるが、やはり想い人の言葉。
アズハルの時とは訳が違う。
アズハル「久しく美しくなった可愛子ちゅあんを目にしたらついな。アーキル部屋に案内してやってくれ。長旅で疲れただろう、思う存分休むといい」
『くすっ、ありがとう。そうさせていただくわ』
軽く挨拶を交わし愛しい人の背中についていく。