あなたと一緒に。

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「……。」

「……。」

えーと、この沈黙。

かれこれ3分はたちます。

(祐希くんたちが来るの遅くて助かった…。)

おそらく、祐希くんがなかなか起きなくて松岡くんが必死に起こしているのだろう。

(でもそろそろ来ちゃうよね…。私の要件も伝えなきゃいけないし…。)

「…あのー、お兄さん?そろそろ祐希くんたちが…「なんで名前なんですか。」…え?」

(な、名前…?)

「どうして、祐希のことは名前で呼んでるんですか。」

(あ、そういうことか。)

「祐希くんに名前で呼んでって頼まれて…。」

「…なんで祐希は、椎名さんのこと、名前で呼んでるんですか。」

「いや、さっき急に呼ばれて私も驚いてるっていうか…。」

「…じゃあ、どうして俺のことはお兄さんって呼ぶんですか。」

「え、だって、お兄さんでしょう?」

「……。」

(なんだか質問攻めだな…。)

「……です。」

「え?」

何を言っているのか聞き取れなかった私は、お兄さんに聞き返した。

「……俺も、名前で呼んで欲しいです。後、俺も呼びたいです…、椎名さんのこと、名前で。」

「……。」

私はそのお兄さんの発言に、ポカンとしてしまった。

「…ダメ、ですか?」

私が何も言わないで固まっているので不安そうにお兄さんが聞いてきた。

「だ、ダメなんかじゃないです!!ただ…。」

「ただ?」

「お兄さんがそんなこと言ってくるなんて思わなくって。」

(名前とか、どうでもよさそうだし…。)

「…たまには言いますよ、俺だって。…っていうか、名前…。」

(あ!つい癖で…!)

「えっと…。ゆゆゆ悠太くん!」

(うわぁー、どもりすぎだろ私!!)

顔が赤くなるのを感じながら、お兄、いや、ゆ、悠太くんの顔をチラリと見ると、

(うわぁ…!)

すごく、嬉しそうな顔をしていました。

「…千秋。」

「……!」

「顔真っ赤。」

「えっ!?いや、あの、これはっ!」

「慌てすぎ。」

クスリと笑って、悠太くんは私の頭を撫でた。

「〜〜っっ!!」

「悠太ー。千秋ー。」

「あ、祐希たち来た。」

「帰ろー。あれ?千秋、顔赤くない?」

「!?」

祐希くんが私の顔を覗き込んできて尋ねる。

「ちょっとここが暑かっただけだよ。ね、千秋。」

「っっ!」

さらに顔が赤くなるのを感じたが、コクコクと頷くだけで精一杯だった。

「あー、悠太、千秋って呼んでるー。いけないんだー。」

「ちゃんと本人の了承取りました。…春、祐希の迎えありがとね。」

悠太くんが松岡くんの方を向き、話掛ける。

「いえ!あの、僕も千秋ちゃんって呼んでもいいですか?」

急に松岡くんに言われて少し驚いた。

「うん、全然いいよ。私も、春くんって呼んでもいいかな?」

「はい!じゃあ、帰りますか!」

「うん。…行くよ、千秋。」

「…うん!」

今度はちゃんと返事が出来た。

(さっき、息、止まるかと思った…。)

祐希くんにも春くんにも名前で呼ばれたのに、悠太くんの時だけ、おかしかった。

それは、あまりにも、悠太くんが優しくかっこよく笑うから…。

(そういえば、千秋の話って、何だったの?)
(あ、悠太くん今日、機嫌悪かったからどうしたのかな、って気になって。)
(…秘密です。)
(ええー!)
((祐希に嫉妬してたなんて、言えるわけないじゃないですか。))
(俺は分かるけどねー、理由。)
(え!教えて祐希くん!)
(祐希、言ったら怒るよ。)
(うーん、千秋がキスしてくれたら、教えてもいいよ。)
(ええ!?無理です!!)
(即答…。千秋のケチー。)

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