あなたと一緒に。
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シャカシャカ。
二人きりの静かな茶室に、お兄さんがお茶を点てている音が響く。
「どうぞ。」
そっと私の前にお茶碗が置かれる。
作法通りにお茶碗を回してから、お茶に口を付ける。
「!」
少し苦いけれど、すごく優しい味がした。
(…お母さんの、味だ。)
「お服加減は…、椎名さん?」
言葉を途中で区切ったお兄さんが、少し焦った顔をしている。
(どうしたのかな…?)
不思議に思っていると、お兄さんが私の方をじっと見ながら呟いた。
「泣いてる…。」
「え…。」
頬に触れてみると、暖かい涙が手に触れた。
「っっ!あ、れ。なんで泣いてるんだ私。ハハ、ごめんなさい。すぐ、止めますから。」
そう言って、目をごしごしと擦るが、止めようと思えば思うほど涙が溢れてくる。
(早く止まれっ!)
ポン。
急に頭の上に大きな手が乗ってきた。
そして、ゆっくりと私の頭を撫でてきた。
「……?」
上を向くと、お兄さんがいつもの無表情の顔で、でもなんだか優しい顔で、私の頭を撫でていた。
「っっ…。」
お兄さんの大きな手に安心して。
泣いてもいいんだよって言われてる気がして。
私は、今まで胸に溜まっていたものを全て吐き出すように泣いていた。