あなたと一緒に。
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茶室には、私とお兄さんの二人きりになった。
いつの間にか、十先生もいなくなっている。
(お兄さんと二人きり…。うぅー、緊張するよぅ。)
「椎名さん。」
「はははい!!」
緊張のあまり、かなりどもりながら返事をしてしまった。
(恥ずっ!!)
顔が熱くなるのを感じた。
「そんな緊張しないで下さい。ただ、椎名さんにお茶を点ててあげたいな、と思っただけ、なので。」
「え?」
お兄さんが頬をポリポリと掻きながらそう言った。
(お兄さんが?)
「…ただ、椎名さんが今日は見ていただけだったな、と思ったので。…あ、嫌だったら、大丈夫、です。」
少し不安そうにお兄さんが私を見る。
(嫌な訳がない!!)
さっきまで見ているだけで十分だと思っていた気持ちが、お兄さんを見ていたらふっ飛んだ。
(私って単純…。)
「いや、全然嫌じゃないです!!むしろ、ありがとうございます!!」
頭をブンブン振って嫌じゃないと伝えてから、ガバッと頭を下げてお礼を言う。
「そんな。俺、まだまだうまく点てられないと思います。椎名さんのお母さんに比べたら本当にひどいと思いますよ。」
ドク。
急にお兄さんの口から、お母さんの話が出て、心臓が跳ねた。
「そんな、お兄さんはお兄さんですから。」
しかし、それには気付かないふりをして、私は平然と答えた。