あなたと一緒に。

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「あ…。」

ふすまを開けると、すごく懐かしい眺めが広がっていた。

その茶室の真ん中に、見知った人物が悠然とした様子でたたずんでいた。

「…十先生。」

お兄さんがその人物の名前を呼ぶ。

すると十先生は、ゆっくりとこちらを振り向いた。

「ご無沙汰してます。」

そう言って、ペコリと私は礼をする。

「……そろそろ来るのではないかと思ってましたよ。」

私をじっと見つめながら静かに話す十先生。

「お二人は、お知り合いなんですか?」

お兄さんが尋ねてくる。

「はい。椎名さんのお母様が私のお茶の先生だったんですよ。…すごく、素晴らしい方でした。」

「……。」

私はそんな先生から、思わず目を反らす。

「あの…。」

「十先生!今日の和菓子はもう準備してよろしいですか?」

お兄さんが何かを言いかけたところで、茶室の奥から着物を着た生徒が出てきた。

「春。」

「あ、悠太くん!遅いですよー。」

もー、と頬を膨らますその生徒は、女の子ではないかと間違えてしまうくらい、可愛らしい男子生徒でした。

(着物が男物じゃなかったら分かんなかった…。)

「…あれ、あなたは今朝の…。」

私の方に気付いた可愛らしい男子生徒は、驚いたように見つめてくる。

(あれ、今朝会ったっけ?)

うーん、と首を傾げるが思い出せない。

「あ、椎名さん。この子は、俺や祐希や要の幼馴染みの、松岡春くんです。」

私の様子に気付いたお兄さんが紹介してくれる。

「初めまして、椎名千秋です。あなたが、塚原くんの言ってたもう一人の幼馴染みさんなんですね。よろしくお願いします。」

挨拶をして、ペコリと頭を下げる。

「あ、ご丁寧にありがとうございます!悠太くんたちの幼馴染みの、松岡春です!こちらこそ、よろしくお願いしますね。」

可愛らしい笑顔を添えて、松岡くんが挨拶を返してくれました。

「椎名さんは、茶道部に見学に来てくれたんですか?」

「はい、一応。…十先生、よろしいですか?」

松岡くんの質問に答えてから、十先生の方を向いて尋ねる。

「もちろんです。ゆっくり見学していってくれて構いませんよ。後、松岡くんは、和菓子の準備をしてしまって大丈夫です。もうすぐ他の部員たちも来る頃ですから。」

十先生が、私と松岡くんに、微笑みながら答えた。

「ありがとうございます。」

「分かりました!」

私と松岡くんは各々返事をしてから、顔を見合わせて微笑んだ。

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