あなたと一緒に。

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「俺、茶道部ですよ。」

お兄さんが少し驚いた顔をして私に言った。

「え!お兄さん、茶道部なんですか!?」

(運動部系だと思ってた…。)

「はい。…あの、良かったら一緒に茶室に行きませんか。俺、ちょうど行く所なんで。」

「あ、はい!ぜひ一緒に行かせて下さい!」

「えー、いいなー、悠太ー。」

浅羽くんが恨めしげにこちらを見てくる。

(浅羽くんが拗ねてしまう!)

「本当にごめんね、浅羽くん。また今度絶対付き合うからさ。」

浅羽くんが私の言葉にピクリと反応する。

「絶対、今の言葉忘れちゃダメだよ。」

「う、うん。」

浅羽くんの有無を言わせぬ迫力にたじろぎながらも頷いた。

「じゃ、いい。」

そう言うと浅羽くんはさっさと雑誌を読み始めてしまった。

「祐希…。」

なんとも言えない顔をしたお兄さんが浅羽くんを見つめていたが、

「じゃあ、行きますか。」

と、私に声を掛けた。

そして、

「はい。」

と返事をしてから、お兄さんと一緒に教室を出た。

しかし、

「千秋!!」

私を呼び止める声に、振り返る。

小春が、とても心配そうな顔をして立っている。

私は、そんな小春の目を真っ直ぐに見つめて話す。

「大丈夫。私、もう逃げたくないんだ。」

「千秋…。」

「ごめんね、小春。心配掛けて。…行ってきます。」

私は、小春に背を向け、少し離れた所で待ってくれているお兄さんの元へと駆け寄る。

「…すいません。お待たせしました。」

「大丈夫、です。じゃあ、行きますか。」

「…はい。」

「……。」

「……。」

ひたすら無言で歩く。

「椎名さん。」

急に、前を歩いていたお兄さんが立ち止まり、私の方に振り向いた。

「はい。」

私も、お兄さんの少し後ろで立ち止まり、向かい合う。

「あの…、茶道部、きっと楽しいですよ。」

「え?」

その言葉に、思わずお兄さんの顔を見上げると、お兄さんは頬をポリポリと掻きながら言う。

「椎名さん、なんだか表情が固いんで…。緊張しているのかな、と思いまして。」

「っ!」

(そっか、私、緊張してるんだ。)

お兄さんに指摘されて、自分の気持ちに気付くとは。

「ははは。情けないですね。すいません、気、遣わせちゃって。もう、大丈夫なんで。行きましょう。」

「……はい。」

それからは、なんとか普通に話せていたと思う。

(こんな私情で、お兄さんに心配や迷惑を掛けるわけにはいかない。)

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