あなたと一緒に。
□16
1ページ/1ページ
「そういえば、春はどうした?」
ふいに塚原くんが、思い出したように浅羽くんのお兄さんに聞く。
「しゅん…?」
初めて聞く名前に首を傾げる。
「あー、そういや椎名にはまだ教えてなかったな。」
塚原くんが頭をガシガシ掻きながら教えてくれる。
「松岡春。あいつらじゃないもう一人の俺の幼馴染み。あ、ちなみに男な。」
「松岡春、くん。」
(会ってみたいなぁー。)
「春なら部活の準備のために先に向かったよ。」
塚原くんの質問にたんたんと答えるお兄さん。
「向かったよって、お前なぁ。手伝ってやれよ。」
塚原くんが呆れた目でお兄さんを見る。
「いやー、祐希に待つのか帰るのか聞いたらすぐ戻ろうと思ってたんですが…。」
チラリとお兄さんが私の方を見た。
「?」
(なんだろう?)
「…いや、なんでも無い、です。祐希はどうするの?待つの?帰るの?」
「…んー。アニメージャ読んで待ってるー。椎名さんも一緒に待ってようよー。」
浅羽くんが私の制服の裾を軽く引っ張りながら言う。
「こら、祐希。椎名さんにも予定があるんだからね。」
お兄さんが浅羽くんをたしなめる。
「むー。椎名さん、なんか予定あるの?」
「あ、うん…。ごめんね、浅羽くん。ちょっと寄りたい部活があって…。」
(ここだけは、絶対に行かないと。)
「…部活?どこ?」
(本当は、あんまり行きたくない。泣いてしまうかもしれないから。)
「……茶道部、です。」
(お母さんとの、思い出の場所……。)