あなたと一緒に。

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「塚原くんの幼馴染みって、浅羽くんだったんだ。」

「あー。残念なことにな。」

「うわー。要最低。要なんてお母さんと離婚しちゃえ。」

「ゴラァ!祐希!適当なこと言ってんじゃねー!ただの親子だ、親子!」

クスクス。

浅羽くんと塚原くんの漫才のような会話に、思わず笑いがこぼれてしまう。

その笑いに気付いてか、浅羽くんが初めて私の方を向いた。

ドキリ。

(この顔に見つめられると、なんだか緊張しちゃう。)

「椎名千秋です。よろしくお願いします。」

慌てて自己紹介をする。

「…ご丁寧にどうも。浅羽祐希です。」

そう言って、ペコリと頭を下げる浅羽祐希くん。

(わー。本当にそっくりだなー。前髪が分けられていないのと、ちょっと髪の長さが長い以外全て一緒だー。)

「俺の顔になんか付いてます?」

(ヤバっ!また見すぎちゃった!)

「へっ!?いや、なんっにも付いてないですっ!」

「いや、一応、目と鼻と口は付いてるはずなんですが。」

「あ、えと!そういう意味じゃなくてですね!えっと…」

「分かってますから大丈夫です。」

(…あ、あれ?なんか、前にも同じような会話をしたような…)

「どうかしましたか?」

うーん、と頭を捻らせて考えている私を見て、浅羽くんが不思議そうに聞いてくる。

「いや、前にも同じような会話を誰かとした気がするんだよね。」

「……そうですか。もしかしてそれって……」

ガラリ。

「遅くなってごめんね。ホームルームを始めるね。」

浅羽くんが何かを言いかけた時に、ちょうど東先生が慌てたように教室に入ってきた。

すると浅羽くんは、前を向いてしまい、結局聞けずに終わってしまった。

(ま、いっか。)

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