Ant

□6月4日
1ページ/1ページ





無駄に広い廊下を歩いて、無駄に長い階段をのぼって。



人の気配すらしない大きなマンションは、ユチョンの家。



私の足音だけが細く響く。



そんな6月4日、午前4時。



世界で1番愛する人の誕生日パーティーに、少しだけ早くお呼ばれした。



みんなには悪いけど。





ゆっくりと、何かを確かめるようにインターホンを押す。



部屋の中からかすかにチャイムの余韻が聞こえると、スピーカーがぶちっと鳴った。






「はーい」


「ユチョン?来たよ」


「おー、おっけー」






もう聞き慣れた彼のネイティヴボイスは、相変わらず健在。



しばらくしてあいたドアからは、ジーパンに白いTシャツ1枚のユチョン君が出てきた。






「あんにょん、 *** 」


「あんにょん、ユチョン。久しぶり」


「あ〜、確かに久しぶりかも」


「すっごく久しぶりだよ〜。あ、それよりそれより、誕生日おめでとう、ユチョン」


「ふっはは!ありがとう、***」






そう言ってユチョンは、私の頬に触れるか触れないかの微かなキスをした。



アメリカンな挨拶に、私は顔の顔は紅くなる。


ユチョンはいつもの優しいほほ笑み。



私は照れ隠しもかねて、彼に小さなシャンパンピンクの紙袋を渡した。






「は、はい!これ!プレゼント!」


「……声のボリュームおかしくないっすか?」


「い、いいの!」


「しかも早くね?プレゼント」


「……いらないんならあげない」


「あー!いるいる!いるから、はい!」






ユチョンは半ば無理矢理私から紙袋を取り上げて、半ば無理矢理私を部屋の中に入れた。



そして彼へまた半ば無理矢理、靴すら脱いでいない私を、いわゆる“お姫様”という形で私を抱きかかえる。






「ちょ、おい!な、なに!」


「うーん。……気分?」


「降ろして」


「いいじゃないっすか〜。今日は俺の誕生日なんだし」


「そういうときだけ…」






しょうがなく大人しくしていると、ユチョンはまだカーテンが閉まっている窓の横に来て止まった。



ふいにユチョンは私の左手を包みこむ。



男らしい堅い指が絡まって私の頬はまた紅く染まって。






「ずっと一緒にいようか」




…ー永遠に






ユチョンはカーテンを開けた。



朝の透き通った太陽の光が私と彼に優しく刺さる。

















いっそう輝く、私の左手薬指は







「……変なの。ユチョンの誕生日なのに」


「誕生日だから、っすかね」


「……なるほど」








I swear for eternal ....



君と一緒ならー…


































…ーふにゃっと幸せ笑顔の彼に、愛を込めて






-END-


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ