Ant
□6月4日
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無駄に広い廊下を歩いて、無駄に長い階段をのぼって。
人の気配すらしない大きなマンションは、ユチョンの家。
私の足音だけが細く響く。
そんな6月4日、午前4時。
世界で1番愛する人の誕生日パーティーに、少しだけ早くお呼ばれした。
みんなには悪いけど。
ゆっくりと、何かを確かめるようにインターホンを押す。
部屋の中からかすかにチャイムの余韻が聞こえると、スピーカーがぶちっと鳴った。
「はーい」
「ユチョン?来たよ」
「おー、おっけー」
もう聞き慣れた彼のネイティヴボイスは、相変わらず健在。
しばらくしてあいたドアからは、ジーパンに白いTシャツ1枚のユチョン君が出てきた。
「あんにょん、 *** 」
「あんにょん、ユチョン。久しぶり」
「あ〜、確かに久しぶりかも」
「すっごく久しぶりだよ〜。あ、それよりそれより、誕生日おめでとう、ユチョン」
「ふっはは!ありがとう、***」
そう言ってユチョンは、私の頬に触れるか触れないかの微かなキスをした。
アメリカンな挨拶に、私は顔の顔は紅くなる。
ユチョンはいつもの優しいほほ笑み。
私は照れ隠しもかねて、彼に小さなシャンパンピンクの紙袋を渡した。
「は、はい!これ!プレゼント!」
「……声のボリュームおかしくないっすか?」
「い、いいの!」
「しかも早くね?プレゼント」
「……いらないんならあげない」
「あー!いるいる!いるから、はい!」
ユチョンは半ば無理矢理私から紙袋を取り上げて、半ば無理矢理私を部屋の中に入れた。
そして彼へまた半ば無理矢理、靴すら脱いでいない私を、いわゆる“お姫様”という形で私を抱きかかえる。
「ちょ、おい!な、なに!」
「うーん。……気分?」
「降ろして」
「いいじゃないっすか〜。今日は俺の誕生日なんだし」
「そういうときだけ…」
しょうがなく大人しくしていると、ユチョンはまだカーテンが閉まっている窓の横に来て止まった。
ふいにユチョンは私の左手を包みこむ。
男らしい堅い指が絡まって私の頬はまた紅く染まって。
「ずっと一緒にいようか」
…ー永遠に
ユチョンはカーテンを開けた。
朝の透き通った太陽の光が私と彼に優しく刺さる。
いっそう輝く、私の左手薬指は
「……変なの。ユチョンの誕生日なのに」
「誕生日だから、っすかね」
「……なるほど」
I swear for eternal ....
君と一緒ならー…
…ーふにゃっと幸せ笑顔の彼に、愛を込めて
-END-